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「メキシコのテキーラ、ありがとうございました。珍しくて、貴重なものを、いただいてしまって、恐縮しております。」 「きれいなばらの花と、ドレスどうもありがとうございました。」 「天下一品のアップルパイ。高価な蟹缶がどっさり。冬の貴重なチャボさ…
何年か前、仕事の悩みを美容師さんに話すと、凄く当たる占い師がいるから聞いてみればと言われたことがある。 占いは嫌いじゃないけどちょっと怖い。それは電話占いで、思い切ってお願いすると、 「あなたは感謝が足りないのよ。不平不満ばかり言ってちゃ駄…
人生の最後をどんなふうに迎えたいか。 そんなことを思う年齢になった。最後なんていつ来るのかわからないし、今日かもしれないし数十年先かもしれない。それでも何かの折に考えずにはいられない。 建築家の宮脇檀の本を初めて読んだのはもう随分前だった。…
「ひたむき」という言葉を思い出した。 こんなに何かに直向きになったことが自分にはあったかな。こんなに信じられるものに出会ったことがあったかな。 間違っていても、正しくても、自分の考えを疑わず曲げず。それでいて謙虚に、主張せず、ただ直向きに。 …
吉祥寺のひとり出版社、夏葉社。その名前を知ったのはSNS。そして代表の島田潤一郎さん。お名前を知ったのは地元の本屋で。 それから気がつけば、自分の小さな本棚に夏葉社の本が増えている。 『夏葉社日記』は、夏葉社でアルバイトをした秋峰善さんの日々の…
夢と現実が混ざり合う感覚。 雨の音、赤ん坊の声、タクシーの運転手、ピアノ曲、みどりいろの電気…。 それが幻想なのか実際に起きているのかわからなくなるような。光と影の合間をユラユラと揺れているような。そして、それを楽しんでいるような。 この本に…
散歩の途中に買った本をテーブルに置く。 「いいなあ、毎日楽しいでしょ」 娘に訊かれると、仕事してない自分が何だか後ろめたくて 「いや、そうでもないよ」 なんて応えてしまう。 楽しいかどうかはわからないけど、確かに気楽になった。時計ばかり見なくな…
タイトルに惹かれて買ってみた。 みうらじゅんとクドカンを読んだ後だし、スルスルと読めそうなものを選んだつもりだった。 でも、実際読んでみると、とても真摯な本だった。 文庫のあとがきに 「たんたんと書くことでしか放出できぬ憤りがあったのだろう。…
あー、とうとう全部読んでしまった。 読み始めた本がとてもおもしろいとき、小説なら先を知りたくてどんどん進むけれど、エッセイの場合、私は出来るだけ最後まで辿り着かないよう少しずつ読む。美味しくて個包装で賞味期限の無いお菓子を、一つずつ一つずつ…
山間の本屋「ウィー東城店」 経営する佐藤さん、彼の家族、そこで働く人たち、店を訪れる人たち、そして町の人たち。 時間の流れと共に様々な出来事があり、皆んなもお店も成長しながら「ゆっくり、元気になる」。 自分の仕事について語るのは、案外むつかし…
「母の臍から下には、編み上げブーツのように縦に縫われた大きな傷があった。」 「子供の頃、近所に昔ながらの銭湯があり、時々母と二人で出かけた。」 その大きな傷は「ていおうせっかい」のもの。 私の母にも私にも、臍の下に同じ傷がある。 そして、同じ…
娘が二十歳で結婚したので料理など教えていなかった。本人も不安だったのか、私の大したことない何品かの作り方をノートに書いて持って行った。 たまに娘の家に行くと、手元にはノートではなくスマホを置いて手速く料理している。今は何のレシピだって出てく…
誰のためでもなく絵本を買うようになった。 娘たちが幼い頃は、家計も気持ちも絵本を買う余裕がなかった。 それなのに、今になって絵本がおもしろい。 この二冊は、小川糸さんのエッセイの中で見つけた。ジョーン・ウォルシュ・アングランド原作で小川さんが…
なんだか、悲しくなるニュースばかり流れてくる。何気なくテレビを付けると悲惨な映像に立ち尽くす。そんな日々だけど皆んな元気ですかと、誰にともなく訊きたくなる。 SNSで『books are magic』というポスターを見つけた。そうだね、どんな時も本は背中を押…
北海道の小さな町。 過疎化高齢化の進む地に暮らす人たちの心情やさまざまな出来事が描かれた連作集。 六編それぞれが完結するたび、ほわっと心あたたまる。 親をみるため町に残ったりユーターンした五十代。生まれ育った故郷の町おこしに情熱をかける二十代…
ほんとうに久しぶりに、一冊一作品の小説を完読した。 以前は上下巻やそれ以上の長編も読んでいたのに、根気が続かなくなったのか小説という世界に飽きたのか、ここ数年間、短編以外の小説から遠のいていた。 読みたくなったのは、表紙に惹かれたのかもしれ…
大平一枝さんの文章に出合ったのはかなり昔で、初めにビビッと感じるものがあり、それ以来追いかけている。 子育ての時期は私の方が少しだけ早かったけれど共感できることが多く、そうそうと頷いたり笑ったりシンミリしたり。 家で仕事をしていることも、私…
大暑は何処かへ消えて立秋がやって来た。 何十年も同じ仕事をして、初めて二日間の夏休みを取ってみる。わざわざ休むというのはどうも気が引けてなかなか思い切れなかったけど、やってみれば何てことはない。 せっかくの連休でも、コロナ禍と長雨で遠くへ出…
夏の思い出は、一人ひとりの記憶の引出しに大切に仕舞われている。 甘いもの辛いもの、苦いもの、せつないもの。 たとえば1つの曲。 聴くたびに蘇る"あの夏"と"あの人"と"あの風景"。 でも、"あの人"も私と同じ記憶を持っているわけじゃない。意外にも相手…
時々開く本が、数冊ある。 なんだかうまくいかないときやモヤモヤが続くとき、自分の判断や言動がいつまでも気になってしまうとき、本の中に忘れてきたものを探しに行く。 向田邦子さんの『夜中の薔薇』も、その一つ。 1981年に刊行された最後の随筆集だ。 …
好きな雑誌は?と訊かれたら、一番に思い浮かぶのがジゼル。 でも、これが、年齢のギャップが大き過ぎてなかなか言えない。 だからこっそり毎号買っている。リビングに置いていると、娘たちが喜んで見る。 先ず、表紙が好き。 写真が良い。透明感のある色彩…
女に老いると書いて「うば」と読むのだなぁと、題名を見て思う。 五十三の宅子(いえこ)さんと、五十一の久子さんが北九州からお伊勢参りの旅をするお話。 江戸時代に。 新幹線も飛行機もバスも無い、山や川を越えて歩いたり渡し船に乗ったりしながら。 私も…
家から5分ほど歩いたところに本屋がある。 読みたい本はネットで買わず、其処に注文している。 地方だからなのか、発売日から十日ほど遅れて届く。 あーやっと来た…なんて歩いて受け取りに行く、そのひと時がとても嬉しい。 『夢に迷って、タクシーを呼んだ…
心配性で困る。 自分のあの言葉が相手を傷つけていないかという心配。 返事が来ない相手に何かあったんじゃないかという心配。 書かなきゃよかった、言わなきゃよかった、訊かなきゃよかった。 ま、どの心配も徒労なのだけど。 年上の女性が書いた本が好き。…
西原理恵子さんご本人が「下品」と公言するこのシリーズは、「ダーリンは70歳」から6冊目。 あの高須クリニックの院長と、漫画家西原理恵子さんのバカップルぶりが描かれている。 確かに表現は「下品」かもしれない。 でも、私の思う「下品」とは違う。 本当…
自分では選ばない本がある。 私のそれは、戦闘、災害、病気…などに関する本。 嫌いとか好きよりも、悲しすぎて最後まで読めないことが多い。しかも、考えすぎて当分抜け出せなくなったりする。 『wonder』も、たぶん、そのジャンルだと思っていた。 近所に住…
この季節は、家に篭って仕事をする時間が増える。 それは例年のことだけど、今年はコロナ禍で余計に出かけない。 家族が居ない時はリビングで、家族が在宅のときは二階の部屋で、一人黙々と…いやモヤモヤと…机に向かっている。 よし、ここで休憩。 ハーブテ…
誰でも、一度は悩み事を人に相談したことがあると思う。 そしてきっと、一度は人から相談されたこともあるはず。 私は相談されるのがとても苦手。 話を聞いたら、まずアタマが真っ白になる。 何を言ってあげれば良いのか思いつかない。 相談された自分の方が…
2018年5月10日 「5/20(日)鎌倉歐林洞のライブを最後にしばらく休みます。再び歌い始めて25年ありがとうございました。」 という呟きを置いて、早川義夫さんは本当に姿を見せなくなってしまった。 何年前だったか、著書『たましいの場所』のあまりにも真っ…
好きな本屋で見つけた古書。 開いたそれぞれのページに、短い文章が書かれてある。 言葉のこと。 感情のこと。 いろいろ。 買って帰って、時々、パッと開いて読む。 その時々の自分の気持ちや生活に、すーっと入ってきて、なるほどなぁ…とか、ほぉほぉ…とか…