not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

はるになると(ジョーン・ウォルシュ・アングランド)

誰のためでもなく絵本を買うようになった。

娘たちが幼い頃は、家計も気持ちも絵本を買う余裕がなかった。

それなのに、今になって絵本がおもしろい。

 

この二冊は、小川糸さんのエッセイの中で見つけた。ジョーン・ウォルシュ・アングランド原作で小川さんが翻訳をしている。

絵も色合いも好みですぐに注文した。

 

私が子どもの頃にも絵本を読んでいなかった。

小学生の頃は、いつも学習机の上に日本文学全集が三冊ほど重ねてあった。それは父が黙って置いたもの。芥川龍之介夏目漱石志賀直哉…もちろん読まない。

読まないのに、ひと月も経つと三冊は新しい作家のものに代わっている。

「むずかしくて読めないからもういいよ」

申し訳ない気持ちで父に言ってみたら

「わからなくても良いから開くだけでいい」

わからないのに面白くないとは言えず、中学生になるまでそれは続いた。

 

母を看取り、一人残った父の家に行くようになった頃、私はようやく自分で書棚からその本を取り出して開いた。読んでみようと思うまでに四十年もかかってしまった。

大人になったら「わからなくていいから開いてみる」ことが如何に大切かも理解できる。

 

春になったらどうなるの?
お友だちってどんな人?
今の子供たちは言葉では上手く答えるけど、感じる気持ちは開かれてるかな。

読んでほしい、聞いてほしい。

それでも絵本は読ませるものでも聞かせるものでもなくて、ただそこに置いておくだけにしている。

何歳になってもいい。私がいなくなっててもいい。いつか自分で手に取って開いてほしいから。

 

f:id:marico1209:20220313131905j:image