友人達から満開に咲く桜の写真が届くのに、越してきた住居からは一つも見えない。
六年前の今日は、見頃も終わって街中の桜はもう散り始めていた。
ポカポカ陽気と春風に舞う花びらの映像が、今もはっきりと思い出される。
いつもより遅い時間に病院に着いておきながら、急にものすごい勢いで父の病室に向かって走った。ドアを開けて顔を確認して三分ほど後、父は旅立った。
抱きしめたんだよね。
細くなって骨ばかりの身体を、何度も何度もありがとうってぎゅっとぎゅっと。
父に抱きしめてもらった記憶がないので、ちょっとよそよそしかったけど。なんだか、そうしてあげたくなった。
それでもきっと、私じゃダメだったと思う。
空に昇って、母に抱きしめてもらった?
たぶん無理だろうね。
あんなに母を困らせたんだから。
今日は花曇り。
明日は雨になるらしいから、お昼を食べたら納骨堂に行って来ます。