父の出生からの戸籍を取るため、県北の町に車を走らせた。
郵送請求も出来るけれど、父が生まれた町の名前が今は無く、どの役場に戸籍があるのか分からないので、辿り教えてもらった町役場へ出かけてみたのだ。
片道一時間半。走行距離に比例して、街から田舎になっていく。山と川と田んぼの景色が続き、お天気も良くて気持ちいい。
父が生まれた家へは、子供の頃よく遊びに行った。
父は六人兄弟の次男で、生まれてすぐ親戚の家の養子になった。生みの母親は、親同士の約束に従うしかなく、我が子を取られ毎日泣き続けたと話してくれた。そんな実母に会うため、父は、育ての母に内緒で里帰りをしていた。両親や兄弟達がいつもあたたかく迎えてくれて、一晩中お酒を飲んで笑っていたっけ。
到着してみると、町は昔と違って新しい建物も増えている。
役場を二つ訪ねて、書類が揃った。
長閑な町を見渡していると、赤ん坊のときの父が見えるような気がした。
帰り道も一時間半。
生まれてから亡くなるまでの戸籍を取りながら、父の人生を辿る旅ができた。
家に帰って、遺影に報告をする。その顔がいつもより嬉しそうに笑っているように見えた。
来週はこの書類を持って、次の手続きに出かけよう。