何十年も同じ仕事をして、初めて二日間の夏休みを取ってみる。わざわざ休むというのはどうも気が引けてなかなか思い切れなかったけど、やってみれば何てことはない。
せっかくの連休でも、コロナ禍と長雨で遠くへ出かけるわけにいかない。
洗濯乾燥機をセットして時間が余る。
そうそう、あの本をまだ開いていなかったと思い出していそいそと仕事部屋に篭る。
岡本仁さんの『また旅』。
雑誌『暮らしの手帳』で連載している「今日の買い物」の一部をまとめたもの。買い物を目的にした旅が、いつのまにか旅そのものが主目的になったそうだ。
その旅も観光目的と言うより、訪れた町を歩いて感じて楽しむもの。
長崎のハタ作り、鎌倉の喫茶店、奈良の植物園、金沢の古書カフェ、高知の露天市、尾道、富山、札幌…
写真も趣があって自分もその風景の中を歩いているような気持ちになる。行ったことのある町は旅の面白い出来事を思い出し、未だ知らない町には憧憬を抱く。
ああ、楽しい。
表紙を開いた一頁めにある新幹線の車窓の写真が秀逸。旅心が触発されてしまう。
行きたいところは沢山ある。まだ見ていないものも、何度も見たものも。
筆者の
「行けば行っただけの新たな魅力を知ることができる町、それがぼくの好きな町だ。」
という言葉に深く同感。
あっという間に読み終えて、また前のページに戻る。
窓の向こうに蝉が泣き始めた。雨が止んだら、ちょっと散歩でもしてこようかな。