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姥ざかり花の旅傘ー小田宅子の「東路日記」(田辺聖子)

女に老いると書いて「うば」と読むのだなぁと、題名を見て思う。

五十三の宅子(いえこ)さんと、五十一の久子さんが北九州からお伊勢参りの旅をするお話。

江戸時代に。

新幹線も飛行機もバスも無い、山や川を越えて歩いたり渡し船に乗ったりしながら。

 

私も、一年に一度、友人と二人で旅をする。

と言っても、新幹線に三時間半乗るだけ。

でも、女二人の旅は楽しい。

 

それが、江戸時代でも、とっても楽しそうなのだ。

旅の途中、温泉に寄ったり美味しいものを食べたり、地方の風物を愛でたりしている。

そして、教養ある二人は歌を詠み書き記す。

素敵だな。

 

たとえば太古。たとえば中世。

私の頭の中にある昔の日本の女性たちは、虐げられ不自由で我慢ばかりというイメージだった。

でも、この田辺聖子さん解説の「東路日記」を読んでいると、昔の女性も今の私達も大して変わりないように見える。

今の時代だって、女性はそれほど自由なわけでなく日々小さな用事や家事や育児や仕事をしながら暮らしている。そして、一年に一度、冷蔵庫に食料を準備してあれもこれもお願いして、時には嫌味の一つも言われて旅立つのだもの。

それも一泊。

 

読了後、いつも一緒に旅する友に感想を送った。

「和して同せずの旅、コロナが落ち着いたらまた出かけようね」

その日が来るまで、姥達は元気でいなきゃね。

 

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