朝目覚めて動き始めると、頭の中に曲が流れる。
誰もがそうなのか、私だけなのかわからないけれど、日々異なるメロディーが流れて一緒に口遊んだりする。
一昨日の朝は少し涼しくてコオロギが鳴いていた。頭の中で突然、桑田佳祐の『Journey』が聞こえてきて、あれれとなった。
好きだけど、普段は聴かないし忘れていた曲。
なぜこの曲なのかなと考えて、ハッと気づいてカレンダーを見る。
『Journey』は、桑田佳祐がお母さんを偲んで作った曲。
そうか、母の命日が近いんだ。
十一年も経てば、母が居ないことは当たり前のように暮らしているけれど、こんな季節だったんだね。
とうに忘れた幼き夢はどうなってもいい
あの人に守られて過ごした時代さ…
母は気性の激しい人で、スポーツが大好きで、演歌が上手くて、仕事では和服を着て髪を結い、胸を張ってどんな困難にも立ち向かった。
私には到底真似できない。
そんな母を思い出すたび、お互いがもう少し歩み寄れば解り合えたのかな…なんて考える。
でも、もう遅いんだ。
だって、母は居ないんだもの。
今日もせつなく秋の日差しが遠のいてゆく
さよならは永遠の旅…
性格は違うけれど、貴女と同じように脚が痛くなって、貴女と同じように老眼鏡が離せなくなってきたよ。
そして、困難にぶつかるたび窓辺の遺影をじっと見つめる。何か言ってよ、なんて子供みたいに言葉を待つ。
こんな歳になってもまだ照れ臭くて、アリガトウは言えないけれど。