山間の本屋「ウィー東城店」
経営する佐藤さん、彼の家族、そこで働く人たち、店を訪れる人たち、そして町の人たち。
時間の流れと共に様々な出来事があり、皆んなもお店も成長しながら「ゆっくり、元気になる」。
自分の仕事について語るのは、案外むつかしい。がむしゃらにやってきた日々を振り返り、時系列に並べ、言葉に表すなんてなかなか出来ない。
この本を読みながらそんなことを考えたのは、佐藤さんの言葉が、自分の仕事を思い出させたから。ひとりで三十数年間続け、つい先日終わりにした。
人を雇うということ。人に教えるということ。
相手を尊重する気持ち。待つことの大切さ。彼や彼女の笑顔を心から喜ぶこと。
職種は違うけれど私にもそんな経験があった。私もこんな思いをした。私もそう考えていた。
だけど、それを言葉に書き起こすと「武勇伝」になったり「説教」になったりしないか。自分の仕事のやり方を押し付けた文章にならないか。
この本は、佐藤友則さんの話九割りと、島田潤一郎さんが想像して文字にしたこと一割で出来ているそうだ。武勇伝どころか、読み終える頃にはこちらまで「ゆっくり、元気にな」ってくる。
ひうち棚さんの絵が、また良い。
表紙の子ども達に話しかけたくなる。
私が自分の仕事を語るのはまだまだ早いけれど、それでもいつか、少しずつ文字にしてみたいな。誰が読まなくても自己満足で終わるにしても。なんとなく、そんな気持ちになった。