ほんとうに久しぶりに、一冊一作品の小説を完読した。
以前は上下巻やそれ以上の長編も読んでいたのに、根気が続かなくなったのか小説という世界に飽きたのか、ここ数年間、短編以外の小説から遠のいていた。
読みたくなったのは、表紙に惹かれたのかもしれない。著者もあとがきで触れている朝倉世界一さんの絵画。二人の女性が旅行鞄を持って海辺を歩いている後ろ姿。空から光が降り注ぎ遠くには正体のわからない建物。
彼女達が歩く先に何があるのか、とても知りたくなった。
大好きだった人をそれぞれ失った二人。
喪失感と不安と希望が渦巻く日々に、日本を離れイギリスのペンザンスという町に出かける。
話しながら食べながら考えながら歩き眠り泣き笑う。
「希望は遠くのきれいな山みたいなもんなんだ。きっとお互いがお互いのことを気に入ってるにちがいない。だから会えさえすればお互いがそれを確認できる、ただその気持ちだけでいいんだよ。」
「そういう意味では、スナックは日本人の心のふるさとかもしれないね。」
「スナックは、行き場をなくした人たちの心の最後のよりどころなんだよ。」
生きながら何かあるたび、ああやっぱり人は一人で闘うんだなと感じる。
友人も家族もありがたい存在ではあるけれど、どうしたって孤軍奮闘。先ずは呆然として、それから迷ったり悔いたり諦めたり開き直ったりしながら奮い立たせて前を向く。
そんな時、誰かと関わり合い言葉を交わし、温かさをもらえたら希望は数倍になる。
スナックちどり。
開店したら是非お伺いしたい。