先日、初めて"焼き鳥屋"へ行った。
夜に仕事を持っていると、夜に出かけられない。
なんとなく出難く、しかもお酒を飲まないので余計に機会も無い。
だから、焼き鳥屋も初めて。
そのカウンター席で、黒い厚みのある角皿に焼きたてを置いてくれる。
熱い熱いと言いながらホクホク食べては、串入れに串を落とす。
笑ったり泣いたりしながらお腹も気持ちも満たされる。
中でも、ミニトマトに豚肉を薄く巻いてタレで焼いた串がとても美味しかった。
普段あまりミニトマトを食べないのに、その香ばしさが忘れられなくて、家で再現してみる。炭火が無いのでフライパンで焼いたけれど、なかなか良い味に出来た。
向田邦子の『男どき女どき』には、小説とエッセイがある。
中の「日本の女」というエッセイが好き。
向田邦子のお母さんとお祖母さんが、たまの外食をしたときの話。
昔は、女の人が外でごはんを食べるのは贅沢だったようだ。
そんな滅多に無い外食をしたとき、注文していない間違えた料理が出される。それでも黙っていただく。
人前でものを食べることの恥ずかしさ。うちで食べればもっと安く済むのに、といううしろめたさ。ひいては、女に生まれたことの決まりの悪さ。ほんの一滴二滴だがこんな小さなものがまじっているような気がする。
女だって外食も出来る時代になった。女も男も平等に認められることが増えてきた。
それでも、女にしか出来ない喜び、女にしか出せない悦びもある。
それもだいじにしたいなと、このエッセイを読むたび思い出す。