何年も前にこの映画を観て、その後、原作を読んだ。
原作は映画より静かで強烈だった。
ふたりのことは事実だから、取材すればもっと色んなことが明らかになるだろう。
でも、どんなに詳細が分かってもお互いの心の中は計り知れない。
ただ、ちょっと感じたのは、自分の中にもフランチェスカが居るってこと。
年齢も環境もよく似ている。
人は毎日の営みの中で「今の生活は本当に自分が望んでいたことなのだろうか」と考えていては生きていけない。
もしあの時こうだったら…と、考えないわけではないけれど、そんなことで立ち止まらず、今置かれている立場や責任を自分の使命として、周りの人達の笑顔や思い遣りを支えとして生きている。
この二人だって、きっと出会うまではそうやって暮らしてきたのだろう。
「もしもロバート・キンケイドに出会わなかったら、わたしはその後ずっとこの農場にとどまれたかどうかわからない」というフランチェスカの言葉が重い。
彼女は、亡くなるまで貸金庫にキンケイドの遺品を預けていた。そして思い出は心の中に仕舞っていたのだろう。
人は皆、大切な思い出を自分の中に持っている。だから、日々の暮らしを続けられるのかもしれない。
だから、逝けるのかもしれない。