右脚の筋肉を痛めて、歩くこともままならなくなった。
家事も出来ず、仕事も休んで、自分のベッドの上で足の置き所を探して悪戦苦闘する。
痛みが続くと気持ちも塞いでくる。
ふと思い立って、『かもめ食堂』の文庫本を開いた。
読了後は『かもめ食堂』の映画を観る。
何度読んでも、何度観ても、好きな作品は気持ちがほぐれる。
そして、読むたび、観るたびに新しい発見がある。
この作品のテーマは「おにぎり」だな…
なんて思う。
フィンランドの人にはあまり知られてないので、最初は誰も注文しない。黒い紙が貼ってある変な食べ物と思われたりする。
日本人でも、おにぎりは好きだけど知らない人が握ったものは食べられない、と言う人も多い。
三人の女性達は、日本でそれぞれの心にぽっかり空いた穴を抱えてフィンランドへ来ている。
北欧の大自然とゆったりした暮らしに吸い寄せられるように、気がついたらその地に立っていた。
でも、実際にフィンランドに滞在していると、現地の人達だってのんびり暮らしてるわけじゃないことが分かる。
誰だって悲しかったり苦しかったり痛かったりするのだ。泣きたかったり、我慢していたりするのだ。
おにぎりは、握る人の思いが美味しい。
相手のひと時の幸せを願う気持ちが、美味しい。
食べる人がそれを感じられた時、おにぎりは国境を越えて人と人を結ぶ。
かもめ食堂は、優しいけど強い。
痛さも辛さも誰に言ってもわからないし、わかってあげられない。慰めは大切だけど、やっぱり自分で立ち向かうしかないんだと、そっと教えてくれる。
エンディングの「クレイジーラブ」が、また良いのよね。
(追記: 脚は十日ほどで回復しました。)