not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

みなと( スピッツ)

春が少しずつ近づくと、なんだかスピッツが聴きたくなる。

『春の歌』や『チェリー』はもちろん、『ロビンソン』『渚』…

青い車』『ホタル』『水色の街』…それぞれの曲に季節があって、想い出がある。

そして、最近、よく口遊む『みなと』。

 

もう会えなくなった君に会いたくて、今日も港に佇み歌を唄う。

とてもせつないけれど、少し前を向ける曲。

 

「胃瘻はしますかしませんか」

「経鼻栄養を付けますか付けませんか」

「中心静脈点滴はしますかしませんか」

「輸血をしますかしませんか」

 

ここ四ヶ月ほど、そんな選択を次から次へと余儀なくされて、アタマがいっぱいいっぱいになってしまう。それでも、父はニコッと笑う。

 

  勇気が出ない時もあり そして僕は港にいる

  消えそうな綿雲の意味を考える…

 

きっと、今生きている大半の人が、大切な人を失っている。

自分もいつか消えていく日まで、出来るならたくさん笑って過ごしたいね。

 

 

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泣くなら、ひとり( 壇蜜 )

三ヶ月に一度くらい、家に一人の夜がある。

初めは恐かったけど、今はとても楽しい。

今夜も久しぶりに一人だとわかったので、DVDを借りてくることにした。

前から気になっていた古い古い映画に決めた。

 

朝食のとき、娘が、「そういえば、おばあちゃん、最近元気よね」と言う。

そうそう。先日、義母は箍が外れたように怒り狂い大泣きをした。色々考え過ぎてストレスが溜まっていたのだろう。その後、ケロッと忘れてしまったかのように、元気になったのだ。

 

娘は私を見て、「お母さんも、今夜観る映画、泣けるのにすれば?泣くって良いことなんだって」と、おしえてくれる。

そうかもしれないけど、私は泣くとわかってる映画や本は苦手。

 

そんな話から、以前読んだ壇蜜さんの『泣くなら、ひとり』を思い出した。

おもしろかったなぁ…

笑うおもしろさではなくて、クスッとしてしまうような。苦笑いとか。ちょっと自分に似ているようなトコロもあってヤだったり、文章とその視線にドキッとさせられたり。それは、忘れていたことを思い出させられたときのドキッ。

 

出勤する娘に手を振って、家に一人になる。

心配してくれてるんだろうな。でも、母さんはだいじょうぶ。ちゃんとひとりで、泣いてるから。

 

 

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ひまわりの夢(斉藤和義)

ちょうど二年前の今頃、仕事で嬉しいことがあって、つい人に話したら

「すごいですね」

なんて言われ、結局自慢話になってしまい後悔したことがある。

その時、ふと、斉藤和義の『ひまわりの夢』を聴きたくなってyoutubeを探したら、このMVが出てきた。

 

  後悔なんてくるくるポイだ…

 

曲に元気をもらい、大杉漣さんのダンスに笑って、嫌な気持ちをリセットできた。

 

そして、今またそのMVを見ながら、今度は悲しくなってしまう。知り合いでも友人でもないのに、せつなくなる。

ブルゾンちえみさんのインスタグラムに、大杉さんとの写真が投稿され

   会ったり、お話ししたり、いつ、突然出来なくなるかわからないんだな、と実感しました。

と、書かれていた。

 

会ったり、お話ししたり。

昨日会った人、お話しした人。今日会う人、お話しする人。そして、自分自身も。

たいせつにしよう。

 

 


斉藤和義 - ひまわりの夢 【MUSIC VIDEO Short.】

 

 

 

 

 

 

 

初心

先月から、病院に実習生が来ている。三週間でワンクール。2クールが終わった。

父の担当になった人は、最初の三週間は女子で、次が男子。男子と言っても、三十代くらいだろうか。初めて挨拶されたときには少し驚いた。

二、三日後、その学生さんと少し話をすると、前の病院で担当患者さんに男性だからと拒否されてしまったそうだ。

「明日から来ないで、と言われたんですよ。でも、お父さんは僕を嫌がらずニコニコ笑ってくれるから嬉しいんです」

と、言ってくれた。

 

その学生さんは、動けない父を車椅子に乗せてリビングホールへ連れて行ってくれる。隣に座って一緒にテレビを見たり新聞を読んでくれる。本が好きな父のために芥川龍之介を読んでくれる。医療用ミトンを外して、お湯で両手を温めてくれたり、盥で足湯もしてくれる。父は益々ニコニコして、毎日嬉しそう。

たまに、女子の実習生も顔を見に来てくれる。

「わたし、お父さんの笑顔を見てるとなんだか心が浄化されるんです」

と、笑ってくれる。

 

次女がまだ中学生の頃。あまりにも勉強が嫌でどんどん成績が落ちていったことがある。その時、私はとても悩んで父に相談をしてみた。父は

「人は必ず誰かの役に立つように出来ている。ただ、この子は勉強で役に立たないだけだ。この子には、なんとも言えない良い笑顔がある。きっと笑顔で役に立つんだよ」

と、言ってくれた。

 

今、父は、認知症で会話もままならず、終末期で力も無くなってしまったけれど、そうやって笑顔で誰かの役に立てているのかなと思う。

人は、死ぬ直前まで誰かの役に立てるのだと、教えてもらっているような気がする。

 

わたしも出来るなら、そんな風になれると良いけれど。

 

 

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I've Got A Feeling ( The Beatles)

近くで昼食を済ませようと辺りを探したら、ファミレスとモスバーガーがあった。どちらにしようか迷って、駐車場が空いているモスバーガーに決めた。

店内に入って意外だったのは、お客さんが皆んな大人お一人さま。静かにお昼を過ごしている。私も席に座り、一息ついた。

 

流れている古い洋楽が心地良く、気になってアプリで調べると、ビートルズの『I've Got A Feeling』という曲だった。次の曲も良くてまたアプリ検索すると、やはりビートルズの『For No One』。

考えてみれば、ビートルズは世代が違うためか、有名な曲以外は知らない。しかも、今まであまり興味が湧いたことがなかった。

 

ふと、先日読んだ大平一枝さんのコラムを思い出す。

   思春期あたりから、ランキング1位になるものが苦手だった。きっとそれは誰にも    よくあることで、私は人とは違うのだという自己顕示欲や、若さ特有の自意識の表れによるものだと思う。

 

そう。ビートルズはあまりに有名で近づかなかったのだ。皆んなが絶賛するものを素直に受け入れられない天邪鬼なのだろう。

そう言えば、私は昔から行列が出来る店に並んだことがない。流行りの服を着たことがない。

もちろん、好きじゃないものもあるけれど、好きか嫌いかを確かめる気持ちも起きないのは、他の人とは違うんだという変なプライドもあったのだろう。

 

でも、こうやって、誰の曲か知らないで耳に入ってくると"あ、いいな"と思う。

今さら、アルバムを聴いてみようと考える。

いい歳になって、少し素直になってきたのかもしれないね。

 

 

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紅盤(斉藤和義)

斉藤和義の『紅盤』には、カヴァー曲も多い。

 

南佳孝の「スローなブギにしてくれ」には私的な思い出がある。

「キャンディ」は、松本隆の歌詞にため息が漏れる。そのきっかけで、原田真二の最近のアルバムを聴いてみると、当時には気づかなかった魅力を感じた。

「ジェラス・ガイ」は、ジョン・レノンが、オノ・ヨーコに作ったと言われている。

この程度の嫉妬は特別なものじゃなく、そうそう、と共感してしまう。

 

BONNIE PINKとデュエットしてる「真夏の果実」には艶がある。女性の声と絡むときの斉藤和義の声は、悪意の無いいやらしさがあっていい。

 

「天使の遺言」は、森雪之丞早川義夫の最強な曲。他の誰にも作れない無二の価値を感じる。

沢田研二の「ダーリング」は、王道。

 

そして、「君に会うまでは」を、このアルバムで初めて知った。

誰の曲だろうと探したら、浜田省吾だった。そういえば、今まで浜田省吾を聴いたことがない。聴いていると突然、"べた"という言葉が浮かんできた。

辞書を引いたら「ひねりがなく、面白味に欠ける」と書かれている。

あんまり良い意味の言葉じゃないのかも。

 

  今夜はそっと時計を 君はバッグにしまい

  僕も気づかないふりで どこまでも歩くよ…

 

そうやってただ二人歩く。震える君の肩先に僕のセーターをかけなよって、うえ〜と思う。

でも。

そんなこと言いながら、内心は素敵だなぁとニヤける。

やっぱり恋は"べた"がいいね。

 

 

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本覚坊遺文 ( 井上靖 )

初めての電子書籍は、井上靖の『本覚坊遺文』にしてみた。

先ず、支払い方法から悩んだ。私は昔人間なので、クレジットカード購入で二の足を踏む。ニ、三日経った頃、コンビニでアマゾンギフトカードを見つけた。

これなら、カード番号を入力しなくても本が買える。早速実行。

 

本覚坊は、千利休の弟子の一人。利休が秀吉に切腹させられた理由は、今だ謎らしい。

私は歴史も茶道も分からないし、侘び茶や茶の湯も知らない。だから、読んでみたくなったのだけど、本覚坊の遺文が実在するかどうかも謎らしく、井上靖が利休を書くのに、本覚坊の目線からしたためたようだ。

 

とにかく、文章が美しい。ああ、日本語ってこんなに趣深くて心静まるものなんだとわかる。時にはこういう言葉に触れて、自国文化の良さを思い出したり、自分自身の在り方を見つめることは大切だなぁと感じる。

私達は外国語をたくさん使うけれど、日本語でもっと上手く言い表わせるようになれるといい。オリンピックの中継だって「アメイジング!」より素敵な日本語があるような気がする。

 

それにしても電子書籍って便利。スマホで読めば荷物も減る。指一本で開く。わからない言葉はすぐ辞書が使える。読めない漢字も調べられる。何度閉じても、読みかけのページが現れる。メモもとれて、コピーも出来る。

 

それでもやっぱり、私は紙の書籍を買うのを止めないと思う。

本屋さんの楽しさって、格別だものね。

 

 

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