「その村には、美浜と呼ばれる
湾に細長くとび出た美しい砂浜があった。」
装丁が良い。
撫でてみたくなるようなカバー。
余白を残した文字列。
青いイラスト。
穏やかに語られる子どもの頃の思い出。
読みながら、小学生まで、夏休みの度に祖父母の暮らす山間部の町で過ごしたことを思い出す。
海こそなかったけれど、毎日、朝から夕刻まで従姉妹たちと遊んでいた。
アリをつかまえたり、白粉花の実を取ったり、川で石を拾ったり。
ラジオ体操、畑のとうもろこし、花火大会、盆灯篭。
子どもの頃、一日が長かった?短かった?
先のことも前のことも考えず、重い荷物も責任もなく、それでもちょっと怖かったり辛かったり淋しかったりしながら今日も明日も明後日も誰かに守られていた。
懐かしさは、せつなさ。
今年も夏が来る。
炎天下の通学路を真っ赤な顔で下校する子ども達に会うたび、がんばれがんばれと心の中で声をかける。
でもきっと、本人たちはなんてことないんだろうね。だって、家にランドセルを置いたらすぐにお友だちと元気に遊びに行くんだもの。そして、夏休みも待っている。
遊べ、遊べ。
夏の思い出がいっぱいできるまで。