お酒を飲まない私に、お酒を飲む人達は
「あなたは人生損してるよ」
と言う。
果物が苦手な私に、果物が大好物な人達は
「あなたは人生損してるよ」
と言う。
お酒を飲んでいる人達は楽しそうだし、果物を頬張る人達は幸せそうだけど、取り立ててそれが欲しいと思わない私は、そうなのかなぁと思う。
でも、飛行機に乗れない私だけは、もう、自分で自分に
「あなたは人生損してるよ」
と言いたい。
旅は大好き。
芭蕉のように、片雲の風に誘はれて漂白の思ひやまず。
奥田民生のように、さすらいもしないでこのまま死なねーぞと心に秘める。
だから、角田光代のように『いつも旅のなか』に飛び込める人が羨ましくて仕方ない。
せめて、この本で旅をする。
スウェーデンやフィンランドやロシアの空気を想像して、イタリア、マレーシア、ベトナム、台湾、キューバ、アイルランド…頬を触る風や埃、人の声や顔を思い浮かべてみる。
角田さんはバックパッカーで、旅程を決めない。歩いたり見たり食べたり感じたりしながら考える。
そして、ハッと「わかる」。
旅の経験は心をどんどん大きくする。
私はバックパッカーにはなれないし、一人旅はちょっとさみしい。
今はコロナウイルスでどこでも行けないけれど、それでもまたいつか旅立てるかな。
とりあえず、飛行機恐怖症をなんとかしなくては。