ようやく梅雨らしい天候になった。
降り続く雨が少しあがったら、鳥が急いて鳴き始め、蝉も負けじと音を立てる。
暦ではもう夏だけど、本格的な暑さはまだまだこれから。
夏が来る。
そう感じたら、皆それぞれに聴きたい曲を思い浮かべるんじゃないかな。
私にもそんなアルバムがいくつかある。
南佳孝の『South Of The Border』も、その一枚。
1978年にリリースされている。あー、もう随分前なんだ。
初めて聴いたのは、もう少し後だった。
昔の記憶はおもしろい。
私がこの曲を一緒に聴いたと憶えている人は、私じゃない他の人と聴いていた記憶を持っていたりする。
この曲を私と一緒に聴いたと憶えている人を、私は憶えていなかったりする。
夫々の人が、それぞれの記憶を持っている。
思い出は、年月と一緒に形を変えていくのだと最近気づいてきた。
そしてきっと、最期には、自分の創り上げたものばかりが残るのかもしれない。
それでも、良い曲はいつまでもその魅力を変えない。
才ある人の歌詞やメロディーやアレンジ、そして演奏は、何十年経てもその印象を変えない。
このアルバムの中の一つひとつの曲は、あの頃の憧れや無謀、せつなさも愛しさもちゃんと蘇らせてくれる。
ジャケットも良いでしょ。