not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

アイネクライネナハトムジーク( 伊坂幸太郎 )

本屋の平置きで目にしたタイトル。アイネクライネナハトムジークって、曲名だよねぇ…モーツァルトだったか。でも、斉藤和義にもアイネクライネという曲がある。

あとがきを読んで、この小説は、伊坂幸太郎斉藤和義のファンであることが執筆のきっかけと書かれていた。

ファンであることを知った斉藤和義から、「出会いにあたる曲の歌詞を書いてくれないか」とオファーがあったそうだ。

伊坂幸太郎は、歌詞は書けないけれど小説ならと受けて、いわゆる"恋愛もの"にあまり興味が無かったので必死に考えたとか。

 

そんなエピソードもまた「出会い」だなと、読みながら感じた。

 

この本には短編が6つある。それぞれの主人公が、他の物語にも登場する。

あ、あの人ここに出てる。

そうか、ここで繋がっていたんだ。

あーこの人、あの時の。

それらはすべて、「出会い」であり「きっかけ」になる。

 

私達も、意外にたくさんの人達と関わっている。

その出会いをどれくらい重要視するかはそれぞれだけど、その人がまた誰かと繋がり、誰かがまた別の人と繋がる。

ちょっとした関わりで、生きる勇気をもらったり、小さな安らぎを感じたり。

嫌な気持ちにさせられたり、傷ついたり、奮い立たせられたり。

人と人との関わりは、おもしろい。

 

この小説を読んだ後、友人達や仕事の相手にも、なんとなく由縁を見つけたくなる。

伊坂幸太郎を読んだのは初めて。恋愛ものも、たまには書いてください。

 

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おしゃれな女( Sight of my court) (原由子)

原由子のオリジナルアルバムは6枚。だと思う。

その中で、一番好きな曲を敢えて挙げるなら『おしゃれな女』かなと…。

『しっかり John-G』も、『花咲く旅路』も、『ヨコハマ・モガ』も『My Baby Shine on Me』も大好きなんだけど、やっぱり『おしゃれな女』がいい。

 

女ごころを見事に表している詞を、ジャズのメロディーに乗せて、せつなく歌う。

なのにちっともいやらしくならないのは、原由子の声だからだろう。

そして、この曲の作詞作曲は斉藤誠。ライブでは桑田さんに"チェリーボーイ"と揶揄われているけど、こんな詞が書けるチェリーボーイがいるはずない。笑

 

  甘い言葉一つかけてくれないのね…

 

先日読んだブログに

「1+1は2」そんなわかりきったことを男は口に出して説明しないけど、口に出して「1+1は2」と説明してほしいのが女。
だから男は「そんなわかりきったこと」を、女性にきちんと口に出して伝えなければいけない。

と、書かれていた。

私の勘違いでなければ、「わかりきったこと」が「甘い言葉」なのかな。

 

「四六時中も好きと言って」は、桑田さんが男目線で書いたのか女目線なのか。

四六時中じゃウソに聞こえるけど、男だって女だって、好きな人からたまに聞きたいよね。

そんな希少な甘い言葉を、女はたいせつにたいせつに重ねて仕舞っている。

そして、生涯の終わりにそれらを取り出し一つひとつ眺めて、ありがとうと言えるのは幸せ。

 

 

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人生エロエロ(みうらじゅん)

みうらじゅんの著書は、『どうして人はキスしたくなるんだろう⁈』以来二冊目。

これは、エロエロに関するエッセイで、一つひとつの始まりに

「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」

という前置きがあり、そこから話が広がる。

 

たぶん、人は皆こころの中にエロエロを持っているのだと思う。

積極的であったり消極的であったりは、人それぞれだろうけど。

そして、それを大っぴらに話す人と、決して話さない人もそれぞれ。

 

何にしても、この本ほど、普通にエロエロ話をすればいやらしくなくて、ただ笑える。そして、いやらしいだけじゃないのが、著者の良いところ。

あからさまなんだけど、純情であったり、奥ゆかしさを感じてしまう。

難しいことを考えなきゃいけない時、ちょっと息抜きするのに良い。

 

大学四年の時、卒業論文の教授は五十代の男性で、研究ただひと筋の人だった。

書いて持って行って読んでもらい、アドバイスを聞いてまた書き直す。それを何度も何度も繰り返して、なんとか完成した日。「私の助手になりませんか」と言われた。

まったく知識の無い私は、教授に反論もせず言われた通り一生懸命書いていたからかもしれない。

「途中で研究をやめてもらっては困ります。結婚は出来ないと思ってほしい」

その言葉に、生涯を捧げるのは無理だと思い、辞退させていただいた。

 

そんな思い出を、ふだん真面目な男性の友人に話したら

「えええ!それって愛人だよ。一人占めじゃないか。だめだよそういうの!」

と、大きな声で叫んだ。

 

わはははは。好きだなぁ、こういうひと。

 

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7日間で自己肯定感をあげる方法 ( 根本裕幸 )

たまたま娘と休日が同じになったので、二人で少し遠出をしてみた。

とは言っても、特急電車で40分。小さな町の駅に新しく出来た図書館。

狭いながらもスタバとTSUTAYAが入って居心地がいい。

カフェラテやシトラスティーをちびちび飲みながら、4時間半で4冊の本を読んだ。

幸せな時間。

 

自分の好みの本ばかりを3冊読了後、また館内を歩いていると、『7日間で自己肯定感をあげる方法』というタイトルが目に入った。

「敏感すぎるあなたが」という副題は他人事に感じたけれど、右下に小さく書かれた「自分さえ我慢すれば…」「自分の意見が言えない…」に思い当たり手に取った。

 

7日間というのは、7段階と言い換えられる。

自分を見つめることから始まり、過去の記憶を素直に取り出してその原因を知ること。今まで自分の常識で蓋をして見ないようにしていた色んな感情を紐解くと、だんだん「ああ、そうだったんだ」と腑に落ちる。

 

実は、八年前に母を、二ヶ月前に父を亡くしてから、なんとなく、自分の中に今までと違う感覚やものの見方が出てきて困惑していた。

悲しいとか空しいとかではなく、さて、ここからどっちへ向こうかというような感覚。

 

著者はフリーカウンセラーの根本裕幸さん。ご本人のプロフィールページに

人生の中でちょっと自分を見失ったとき、元気がなくなったとき、先が見えなくなったとき、幸せを感じられなくなったとき、そんな人生の一瞬に出会う存在でありたいと思います。
誰もが素晴らしいものを持っていて、他の誰でもない素敵な魅力や可能性や才能をいっぱいもっているのだけど、何かの拍子にそれが見えなくなる時があるものです。
そんな時に本来の自分を思い出し、取り戻すお手伝いをする存在でありたいと思っています。

と、書かれている。

 

「私は私、あなたはあなた」「これが私だから、これも私だから」

本も音楽も何も、会うべくして会うのだとつくづく感じる。

ここからまた、ゆっくりリスタートできれば嬉しい。

 

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モリのいる場所

初めの映像を見ながら、どんな山奥に暮らしているのかと思っていると、住宅地の一角だった。

モリのいる場所』は、画家の熊谷守一の晩年の"ある一日"を描いた作品。

有名な人を題材にしている映画なので、その"生涯"がテーマになりそうだけれど、違っていた。

 

調べてみると、その敷地は三十坪くらいらしい。そんな小さな家と庭を、モリは毎日何時間もかけて探索する。夏なので、小さな虫や爬虫類が忙しそうに動き回っている。ときどき猫も顔を出して、ご本人が掘った池には魚も泳ぐ。

 

その家には、モリと奥さんと姪の三人が暮らしている。だけど、一日のうちに来客が後を絶たない。とにかく慌ただしい。そして、楽しそうなのだ。

奥さんを演じる樹木希林が良い。この人が主役じゃないかと思うほど大きな位置にある。そして、姪役の池谷のぶえがまたまた良い。他のキャストもそれぞれが個性的で、この中で主役の佇まいを見せられるのは、やはり山崎努じゃなきゃならないのかなと思ったりした。

 

コメディやファンタジーの要素もほんの少し。

クスクス笑いながら、しんみり頷きながら、ほんわりと人生を教えられる。

誰も責めず、誰も妬まず、誰も蔑まない。

今の世の中に欠けてしまったそんな目線を、思い出させてもらえる。

 

考えてみれば、劇場で映画を観たのは十年ぶり。

忙しかったなんて言い訳に過ぎない。誘ってくれた友人に感謝しよう。

 

 

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苦味( ビター )を少々 399のアフォリズム( 田辺聖子 )

アフォリズム( aphorism )を日本語にすると、格言とか名言。

三省堂 大辞林によれば、「簡潔な表現で人生・社会などの機微をうまく言い表した言葉や文。」となる。

 

この本は、田辺聖子の著書から、399個のアフォリズムを集めたもの。

偉人、著名人、作家などの名言を集めた本は他にもたくさんあるけれど、個人的に、魅力を感じるものと感じないものがある。

 

知ったかぶりでは薄っぺらい。

上から目線には、寄り添えない。

お説教では、なかなか人の心には伝わらない。

 

田辺聖子のそれは、大らかで、ちょっと苦味も入って楽しい。

読んで忘れて、そのずっと後に何かを経験したとき、「ああ、あれ!」と思い出す。

そして、またこの本を開いて、フフフと笑う。

 

人生のこと、恋愛のこと、男と女、やさしさ、別れ、歳を取ること…

 

  男と女のつきあいにボロが出てはいけない。「何クワヌ顔」というのは、男と女の、ほんものの恋に、いちばんたいせつなのだ。

 

  私にいわせれば、人を責めるのは想像力がないからである。責めるというのは何かの確信があるからで、確信と想像力は相反するものである。

 

  女から見ると自分よりほかの女を愛してる男はみな、間抜けて見えるもんだ。

 

パッと開いたページに、見つかるおもしろさ。今夜は何が出てくるかしら。

 

 

 

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この世でいちばん大事な「カネ」の話 (西原理恵子)

こんな歳になって、ようやく「お金」に向き合い始めた。

母は、十五歳で故郷を離れ、海千山千。沢山の苦労を乗り越えてきた強い人。

その母に私はいつも

「あんたは欲が無い」

と、嘆かれ、叱咤され呆れられ守られてきたのだと思う。

亡くなる数日前、

「これからお父さんをどうしよう」

と溢した私に

「大丈夫。あんたは小さなお金には困らないように出来ているから」

と、笑った。

 

お金のことを口にするのは、はしたないことだと日本人は考えているらしい。思い当たる。

西原理恵子のこの本は、お金の恐ろしさ、貧乏という環境の辛さから始まる。

世界の至る所で貧困に泣く子供達。

これだけ物に溢れる日本の中に潜む貧しさ。抜け出せない負の連鎖。

でも反面、お金は、自分の大切な人を守り、幸せにして笑顔にしてあげられる良いものでもある。

とも書かれている。

どんな風に使うかは、自分次第。

 

  そのために、お金を稼ぎましょう。

  働くことが、生きることなんだよ。

  それを忘れないで。

 

背筋が伸びる。

「ケチというのはお金をケチるんじゃない。気持ちをケチるんだ」

「どうせ使うなら、生きた金を使いなさい」

母の声が聞こえてくる。

そうだね。誰かを幸せにするために、一生懸命仕事をしよう。

 

 

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