子どもの頃は、とても寝付きが悪かった。
二段ベッドの上が私で下が祖母。小さなアパートの二階。階下は母の小料理屋。
夜中までずっと、賑やかな笑い声と歌声。
祖母が電気を消して、一時間…二時間…真っ暗な天井を見つめていた。
夜の闇が怖くなって祖母を起こす。今思えば可哀想に、祖母も寝不足になっていたのだろう。
小学校の修学旅行で大広間に布団を並べて寝た。一人、二人…寝息が増えていく。
三時間経っても四時間経っても眠れず、あんまり心細くて
「誰か起きてるひと」
と声を出してみたら、返事が無かった。
年の瀬も近づいた一昨日、好きな本屋に行った。
いろいろな本を手に取っては開き、また棚に戻す。
だけど、『よるのむこう』という絵本は、何度も何度も開きたくなる。
nakabanさんの絵に吸い込まれる。
夜の向こうに何があるのか知りたくなる。
あんなに苦手だった夜の向こうに。
ああ、そうそう、こんな気持ち分かる。
こんなものが見えていたんだ、と思い出す。
そうして
よるのむこうに、何があるか、わかった。
素敵な絵本。夜になるたび、ベッドで開く。
今日は大晦。
また、よるのむこうを開いて夜に溶けてしまおう。
もう、夜は怖くないね。