not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

book

熱帯安楽椅子 ( 山田詠美 )

確かに、愛しすぎると苦しみに追いかけられるようになる。と、この本を読みながら改めて思った。相手を好きになればなるほど、その人のすべてを知りたくなる。そして、自分だけのものにしたくなるからだ。自分のものって、何だろう。そんなことは100%不可能…

最後の伝言 save the last dance for me(原田マハ)

驚いたなぁと、この短編を読みながら感じた。原田マハの『最後の伝言』は、表題『あなたは誰かの大切な人』という文庫の最初にある。 享年七十三歳のお母さんの葬儀から始まる。残されたお父さんと娘姉妹。そのお父さんとお母さんが、自分の父母に重なる。な…

向田邦子の恋文 (向田和子)

ようやくの平日休み。出かける前にちょっと紅茶を飲んで、前日買った文庫を開けて…気がつくと最後まで読んでしまった。 こんな内容とは知らずに買ったのもあり、本を閉じてなんとも言えない気持ちになる。個人的な感想を言えば、これは公表して欲しくなかっ…

九十歳。何がめでたい ( 佐藤愛子)

久しぶりに本屋へ寄った。 入り口近くに、ベストセラーがディスプレイされていて、佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』がランキング一位になっていた。 私がこの本を読んだのは、今年の二月。八十七歳の姑が、入院している時だった。 病室の窓からは、大…

四度目の浪花節 ( 川上弘美 )

友人がヘアカラーを止めた。バッサリショートにして、頭の半量ほどが白い。髪の流れに白波が映えて、もともと個性的なセンスを持つ彼女にとても似合う。相当おしゃれなのだ。 良いかも。 気になっていたとき、雑誌にそんな特集を見つけた。さっそく美容院に…

人生の贈り物 ( 森瑤子)

森瑤子さんが、五十二年間の短い人生を駆け抜け天に召されて、二十四年になる。絶版となった『人生の贈り物』を、時々開いて読んでみる。彼女が旅先で出会い心惹かれて手に入れた三十三の愛用品が、写真とエピソードで紹介されている。どれもため息が出るほ…

頭に来てもアホとは戦うな!( 田村耕太郎)

本屋でこのタイトルを見つけ、仕事の人間関係で悩んでいる娘に教えようと思った。その娘が、家に帰るなりこの本を話題にした。それならばと、後日、本屋に寄り買って帰った。 著者の田村耕太郎は、日本戦略情報支援機構代表取締役。前回参議院議員で、内閣府…

たましいの場所 ( 早川義夫 )

何年も前、好きなブログに紹介されていたので本屋に探しに行った。斉藤和義の絶賛帯が巻かれていて、よけいに読みたくなった。それからずっと寝室に置いている。私は人の言動にすぐグルグル巻きになるので、そんな日はこの本を開く。 本当のお金持ちは「僕は…

くじけないで( 柴田トヨ )

この本に出逢ったのは、父を初めて連れて行ったデイサービスの部屋。七年前、父が七十二歳のとき、母を亡くしたショックから気持ちが病んでしまった。まず、お風呂に入らなくなった。人は本当にこんなに汚れるんだと感じた。どんなに頼んでも泣いても、入っ…

着かた、生きかた ( 地曳いく子 )

年齢が増えると、ある日突然、似合っていたはずの服が浮いてしまう。それは、私の場合、25歳のとき、35歳、45歳…と、一の位が5のときにやってくる。黒ばかり着ていた頃もあったし、カーキばかりの時もあった。白がどうやっても似合わない時もあれば、スカー…

あ・うん ( 向田邦子)

読みながら、ドラマの場面が見えてくる。この小説がそのまま脚本になりそうで、キャストを考えて楽しんだりする。実際、ドラマや映画になったようで、たみに田中裕子は適役だと思った。 自分が読んだ向田邦子の小説のどれにも共通しているのは、"黙す"という…

色彩の息子 (山田詠美)

人生には、思うままにならないことがいっぱいあります。そして、それは悲しいことでなく、ありがたいことでもあるのです。自分の思うままになる世の中というのは、同時に、他人の思うままになる世の中でもあるわけですから、それが実現したらお互いは安心し…

ひとり暮らし(谷川俊太郎)

谷川俊太郎さんの詩は、素晴らしいのだろうけど、感性が衰えた私には難しい。でも、随筆はとても楽しい。 うんうん、なるほどと共感してみたり、へぇぇ、やっぱり詩人の視点は格別だなと感心してみたり。 生きる歓びについて、ひとり暮らしの弁、愛というも…

ボクたちはみんな大人になれなかった(燃え殻)

長い長い雨と曇りの日々を、案外平気で過ごしてきたはずだったけれど、こうやって久しぶりにお日さまを見たら、泣きそうになった。 私くらいの年齢になると、ちょっと鬱々すればお年頃だと揶揄されるから、いつもにこにこと笑顔を見せる。でも、娘だって鬱々…