not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

残花亭日暦 (田辺聖子)

少し遠出のドライブを楽しみにしていたら、当日は朝から大雨。

それでも、たまのお休みなのにと目的地を変えて出かけた。

 

その図書館は、山の中の小さな駅に連結している。

TSUTAYAとスタバも入っていて、椅子もテーブルもたくさんある。

好きな本を、好きな椅子で、時間を忘れて楽しんだ。

 

田辺聖子さんの著書は、小説も好きだけどエッセイもおもしろい。

笑いあり、涙あり。しみじみしたり、なるほどと共感したり。

『残花亭日暦』は日記形式で、中に、ご主人の看取りのことも書かれている。

人生の途中で出逢った最愛の人が病気になり、命絶えるまでを見守る。

壮絶なのだけど、あたたかい。愛が大っきい。

 

そしてふと思った。〈かわいそう〉と思ってくれる人間を持ってるのが、人間の幸福だって。〈愛してる〉より、〈かわいそう〉のほうが、人間の感情の中で、いちばん巨きく、重く、貴重だ。

 

「かわいそに。ワシはあんたの味方やで」

逝く方も、見送る方も、お互いを〈かわいそう〉と愛おしむ。

 

読みながら泣きそうになって、あわてて前を向いた。

図書館の大きな窓から見える山々も、雨に煙る。

 

田辺聖子さんは、冷静でありアッサリしているようで、やっぱり最期まで女だったような気がする。

天国でおっちゃんに会えたかしら。

心からご冥福をお祈りします。

 

 

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