少し遠出のドライブを楽しみにしていたら、当日は朝から大雨。
それでも、たまのお休みなのにと目的地を変えて出かけた。
その図書館は、山の中の小さな駅に連結している。
TSUTAYAとスタバも入っていて、椅子もテーブルもたくさんある。
好きな本を、好きな椅子で、時間を忘れて楽しんだ。
田辺聖子さんの著書は、小説も好きだけどエッセイもおもしろい。
笑いあり、涙あり。しみじみしたり、なるほどと共感したり。
『残花亭日暦』は日記形式で、中に、ご主人の看取りのことも書かれている。
人生の途中で出逢った最愛の人が病気になり、命絶えるまでを見守る。
壮絶なのだけど、あたたかい。愛が大っきい。
そしてふと思った。〈かわいそう〉と思ってくれる人間を持ってるのが、人間の幸福だって。〈愛してる〉より、〈かわいそう〉のほうが、人間の感情の中で、いちばん巨きく、重く、貴重だ。
「かわいそに。ワシはあんたの味方やで」
逝く方も、見送る方も、お互いを〈かわいそう〉と愛おしむ。
読みながら泣きそうになって、あわてて前を向いた。
図書館の大きな窓から見える山々も、雨に煙る。
田辺聖子さんは、冷静でありアッサリしているようで、やっぱり最期まで女だったような気がする。
天国でおっちゃんに会えたかしら。
心からご冥福をお祈りします。