not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

色づいた果実(西城秀樹)

前回の記事で、琴の話を書いたとき、それを習っていた部屋を思い出した。

其処は父の部屋で、趣味のオーディオとレコードと本が綺麗に並べられていた。

オーディオは良い物らしく、私は触らせてもらえなかった。


それでも、父は、私が大好きだった西城秀樹のレコードを買ってきてくれて聴かせてくれた。

懐かしい45回転。何枚あったかな。


当時のシングルレコードには、A面にヒット曲、B面にはあまり聴いたことのない曲が収録されていた。

そのB面を聴くのが、楽しみだった。


そうそう。

中でも一つ、とても気に入った曲があって、父が仕事に行っている間に自分でレコードをセットして聴いていたっけ。

あの曲は何だったかな…。

と、YouTubeで検索するとすぐに見つかった。

『色づいた果実』という曲で、『愛の十字架』のB面。


絶叫タイプの激しい曲が多かった中で、この曲は力を抜いて語りかけるような歌詞とメロディー、歌い方が好ましかった。


一人で聴いていると、母が入ってきて

「あ、広島のおにーさんだ」

と、笑っていたことも思い出す。


   ふたりで燃やした今日の夕焼けに 

   溺れてみるかい 秋だから…


昔好きだったアイドルは、闘病生活を経て早々に天国へ行ってしまった。

人は儚い。

『色づいた果実』をお気に入りにセットして、これからまた聴くことにしよう。



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簪(桑田佳祐)

世の中を憂うほど才知は無いけれど、たまに、疲れたなぁって時がある。

からだなのか、きもちなのか、ちょっと休みたいなぁって宙を見る。

「出来ることしか出来ない」

で、通らないことが多い。

どこで線引きするのか、どこまで折衝するのか。

突っぱねたいときに、ニコニコと受け入れてしまう。

困った性格。

 

桑田佳祐のラジオ番組『やさしい夜遊び』に、生歌コーナーがある。

なんて、知ったように書いているけれど、うちには電波が届かない。

radikoも試してみたけど、聴こえない。

で、偶にYouTubeに出ているのを聴く。

 

今回は『簪』を見つけた。

 

   情に流され溺れてばかりじゃ この世に生まれた甲斐もない… 

 

それは恋の歌だろうけど、なんだか優柔不断な自分の胸に突き刺さる。

 

 

今日は大好きなお店に行こう。

心のこもった美味しいお昼ごはんを食べよう。

ゆっくりと、あたたかい珈琲を飲もう。

 

きっと、すぐ元気になるはず。

 

 

 

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元気を出して(Lisa Halim feat. Micro from DefTech)

三日後に海外旅行へ発つ娘が、大きなスーツケースに少しずつ荷物を入れている。

ふと、スマホを出して、

「これ、カバーなんだけどとてもいい曲」

と、聴かせてくれる。

Lisa Halim と、デフテックMicroの、優しい波のような歌。

 

   涙など見せない強気なあなたを…

 

ああ、この曲。オリジナルは竹内まりやの『元気を出して』だね。

 

娘の海外旅行は、もう何度目だろう。私自身が海外に出かけないので、何度目でも慣れなくて、一人で心配になる。

今回もかなり遠い国へ行くので、出発して帰国するまでずっと心配し続けると思う。

彼女には彼女の人生があって、元気で好きなように生きてくれたらいいのだけれど。

 

   チャンスは何度でも訪れてくれるはず

   彼だけが男じゃないことに気づいて…

 

そんなフレーズがちょっと気になって、爪を塗っている背中を見る。

恋は決して楽しいだけじゃないけど、そろそろ新しい人が現れるといいね。

恋だけが幸せになる方法じゃないけど、手を取り合う人がいてもいいね。

 

どんな貴女も笑ってくれる。

この夏は、そんな人に出逢えますよう。

 

 


元気を出して / Lisa Halim feat. Micro Def Tech

 

 

 

歩いて帰ろう(斉藤和義)

今年度は、なんだか仕事時間が増えている。

それに合わせて、生活時間が不規則になっている。

そして朝起きて夜寝るまで、時計ばかり見て、時間の計算ばかりしている。

 

空いた時間に美容院へ行き、帰りに寄り道をした。

懐かしい大学構内を日傘をさしてユラユラ歩く。

暑い日差しの中、遠い山並みも近くの銀杏の緑もゆったりと風に揺れる。

 

斉藤和義の『歩いて帰ろう』を思い出す。

   急ぐ人にあやつられ 右も左も同じ顔

   寄り道なんかしてたら置いてかれるよ すぐに…

 

この曲は、1994年『ポンキッキーズ』のオープニング曲でヒットした。

でも、当時自分の思う音楽活動が出来ず悶々とした気持ちを歌詞に書いたと、何かで読んだことがある。

 

Twitter一年目で、アカウントを削除した。

心優しいフォロワーさん達に恵まれて楽しかったのだけど、やはり、私には彼処は急がし過ぎた。クルクル回る情報に、クルクル目が回る。

田舎のネズミが、Twitterという都会に出てみたけれど、田舎が恋しくなったような気持ち。

削除して、なんだかホッとした。

 

   急ぐ街を見下ろして のんびり雲が泳いでく…

 

仕事もプライベートも、自分の思うように出来なくて当たり前なのかもしれない。

でも、急ぐ人にあやつられるのは嫌だな。

 

たまには、のんびり歩いて帰るのもいいね。

 

 

 

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South Of The Border (南佳孝)

ようやく梅雨らしい天候になった。

降り続く雨が少しあがったら、鳥が急いて鳴き始め、蝉も負けじと音を立てる。

暦ではもう夏だけど、本格的な暑さはまだまだこれから。

夏が来る。

そう感じたら、皆それぞれに聴きたい曲を思い浮かべるんじゃないかな。

私にもそんなアルバムがいくつかある。

 

南佳孝の『South Of  The Border』も、その一枚。

1978年にリリースされている。あー、もう随分前なんだ。

初めて聴いたのは、もう少し後だった。

 

昔の記憶はおもしろい。

私がこの曲を一緒に聴いたと憶えている人は、私じゃない他の人と聴いていた記憶を持っていたりする。

この曲を私と一緒に聴いたと憶えている人を、私は憶えていなかったりする。

夫々の人が、それぞれの記憶を持っている。

 

思い出は、年月と一緒に形を変えていくのだと最近気づいてきた。

そしてきっと、最期には、自分の創り上げたものばかりが残るのかもしれない。

 

それでも、良い曲はいつまでもその魅力を変えない。

才ある人の歌詞やメロディーやアレンジ、そして演奏は、何十年経てもその印象を変えない。

このアルバムの中の一つひとつの曲は、あの頃の憧れや無謀、せつなさも愛しさもちゃんと蘇らせてくれる。

 

ジャケットも良いでしょ。

 

 

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残花亭日暦 (田辺聖子)

少し遠出のドライブを楽しみにしていたら、当日は朝から大雨。

それでも、たまのお休みなのにと目的地を変えて出かけた。

 

その図書館は、山の中の小さな駅に連結している。

TSUTAYAとスタバも入っていて、椅子もテーブルもたくさんある。

好きな本を、好きな椅子で、時間を忘れて楽しんだ。

 

田辺聖子さんの著書は、小説も好きだけどエッセイもおもしろい。

笑いあり、涙あり。しみじみしたり、なるほどと共感したり。

『残花亭日暦』は日記形式で、中に、ご主人の看取りのことも書かれている。

人生の途中で出逢った最愛の人が病気になり、命絶えるまでを見守る。

壮絶なのだけど、あたたかい。愛が大っきい。

 

そしてふと思った。〈かわいそう〉と思ってくれる人間を持ってるのが、人間の幸福だって。〈愛してる〉より、〈かわいそう〉のほうが、人間の感情の中で、いちばん巨きく、重く、貴重だ。

 

「かわいそに。ワシはあんたの味方やで」

逝く方も、見送る方も、お互いを〈かわいそう〉と愛おしむ。

 

読みながら泣きそうになって、あわてて前を向いた。

図書館の大きな窓から見える山々も、雨に煙る。

 

田辺聖子さんは、冷静でありアッサリしているようで、やっぱり最期まで女だったような気がする。

天国でおっちゃんに会えたかしら。

心からご冥福をお祈りします。

 

 

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夢で逢ってるから (DREAMS COME TRUE)

先日、娘と二人で鎌倉へ遊びに出かけた。

鎌倉へは、まだ三度目の初心者旅。

駅を出て大勢の観光客から離れ、以前おしえてもらった"sahan"というカフェに歩く。

外の雑踏とは別世界のゆったりとした店内で、やさしいランチをいただく。

 

それから江ノ電に乗り、由比ヶ浜で散歩。

一人のときは気のままに歩くけれど、娘がいると彼女がナビになる。

お店を見たり、コーヒーを飲んだり、お土産を買いながら鎌倉へ戻った。

 

前々回は、友人と明月院を訪れた。

六月の満開の紫陽花を堪能。もう暑くて、汗を拭きながら階段を上った。

今回は五月初旬だったので、紫陽花には早くて半袖もまだまだ寒かった。

 

そう。鎌倉へ行くたび、ドリカムの『夢で逢ってるから』を思い出す。

とても好きな曲。

 

忘れたいことを忘れようとしているうちは忘れられない。

"私は大丈夫"と笑うのは可愛げがないと言う人もいるけど、それが一番かわいいような気がする。

夢で逢っているうちはまだ大丈夫じゃない。

それを胸に仕舞えたら、少しずつ新しい自分になっていく。

憂いを抱いた笑顔が、いつか晴々と空を向けますよう。

 

私は大丈夫、夢で逢ってるから。

 

 

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