not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

Fatou (Fatoumata Diawara)

雑誌に紹介されていたアルバムのジャケットに一目惚れ。すぐにAmazonで注文した。
そして、四週間が過ぎて…もしかしたら騙されちゃった?と不安になった頃、ようやく届いた。

すぐに聴いてみると、予想どおりの素敵な音楽。
それから、このアーティストは何処の誰なの?と調べてみる。マリ出身の両親を持つファトゥマタ・ジャワのデビューアルバムだそうだ。

マリって、マリ共和国のことだろうか。映画『禁じられた歌声』で、過去にイスラム過激派から制圧を受け、歌さえ禁じられていたと知る。
人から歌を取ったらどうなるのだろう。笑顔も愛も消えちゃうような気がする。

歌や楽器の音から、そのルーツを感じることがある。それが生まれた地の風や土や空が見えてくる時がある。
心が溶けるような音楽。上を向ける音楽。

朝に聴けば朝のように、夕べに聴くと夕べのように、夜に聴けば夜のように。

これは、まさにそんなアルバム。
当分ハマりそう。

 

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clouds (Joni Mitchell)

平日のお休みを週に一度取るようにしている。
その日は出来るだけ用事を早く済ませ、人に会ったり、一人でいろいろなものを見たり聴いたり食べたりする。

 

本当はラーメンを食べたいけど、一人でラーメン屋さんは憚られる。頑張っている男性達の僅かな休憩を、のろのろと食べる女が不愉快にさせてはいけないような気がして。
それで、女性ばかりのカフェに入る。
いくつか好きなカフェがある。

先週行ったところは、食事も美味しいけれど音楽が好み。その日はジョニ・ミッチェルの『clouds』が流れていた。良い時間だった。

 

帰り道、昔の友人にばったり会う。
「仕事帰り?」
と訊かれて
「ううん、一人でランチした帰り」
と答えたら
「いいなぁ!ほんと羨ましい生活!」
と言われ、慌てて苦労もあるのよと言い返してしまった。
そんなとき、黙って微笑むような女性になれたらいいのにと、後でしみじみ。

まだまだだなぁ…、

 

 

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最後の伝言 save the last dance for me(原田マハ)

驚いたなぁと、この短編を読みながら感じた。
原田マハの『最後の伝言』は、表題『あなたは誰かの大切な人』という文庫の最初にある。

享年七十三歳のお母さんの葬儀から始まる。残されたお父さんと娘姉妹。
そのお父さんとお母さんが、自分の父母に重なる。なんだか似ているのだ。

母が私を出産するとき、父は行方不明だったらしい。朝まで飲み歩いているところを、父の友人が見つけ出して産婦人科まで連れて来たと聞いている。
母は小料理屋をやっていて、夜は不在だった。だから父は淋しくて毎晩お酒を飲みに出かけていた。

父の勤務先は、建設会社の経理部。仕事は几帳面で評判も良かった。
なのに、友達と高級料亭に行き支払いが足りなくて母がお金を持って走ったり、自分の給料はすべて飲み代に使い、不足は母が毎月支払いしていたと言う。

この小説みたいに、父はお洒落でカッコ付け男だった。私にとっても、密かに自慢の父だった。そして同じように、母が息を引き取るとき、父はいなくなった。寿司屋でお酒を飲んで家に戻って寝ていたのだ。
ただ、この小説と異なるのは、父に女関係だけは無かった…と、母が言っていた。

そうだ、そうだ。
越路吹雪の歌を、母はよく歌っていた。私もその曲が好きで、同じように歌っていた。

母を看取って、その顔を見たとき。
一番に感じたのは、私はこの人の人生の半分も知らないということ。
父にも母にも、私の知らない思いや出来事がたくさんあるのだ。

涙を堪えて読んだ。
子が親を送るのは一番普通のこと。
まだ、泣くわけにはいかない。

 

 

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Local Hero

正月三ヶ日が明けて、仕事始め。極寒の朝にエアコンが勝手に切れる。

付けても付けても切れるので、家の中が冷たすぎて手足が悴む。

そんな冷たい手で、ホットケーキを焼いて、コーヒーを淹れる。  

連休は、なにかとせわしくて、本も音楽も映画も忘れてしまう。だから、昨日は、時間の合間に文庫本を一冊買い、レンタルDVDを一本借りてきた。

 

好きな映画はいくつかあるけど、『Local Hero』は格別。

1983年の作品で、初めて観たのは十五年ほど前だろうか。音楽を監修したマーク・ノップラーが大好きで、そこから入った。

 

大手石油会社に勤めるエリートサラリーマンが、用地買収のためスコットランドの小さな村に出向く。

彼が其処で得たもの、捨てたもの。知ったこと、忘れたこと。感じたこと、感じられなくなったこと。

美しい風景と人の情感に、ノップラーの音楽が相まって、なんとも言えない心に残る作品になっている。

 

意識しているわけじゃないけど、何となく心の拠り所を探している時がある。

この映画をまた観たくなったら、そんな時かもしれないね。

 

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向田邦子の恋文 (向田和子)

ようやくの平日休み。
出かける前にちょっと紅茶を飲んで、前日買った文庫を開けて…気がつくと最後まで読んでしまった。

 

こんな内容とは知らずに買ったのもあり、本を閉じてなんとも言えない気持ちになる。
個人的な感想を言えば、これは公表して欲しくなかったなぁ…

 

向田邦子の短編を読んでいつも感じるのは、人は誰もが心の中に秘め事を持っていてそれを誰にも言わず墓に持っていくということ。

そんな人だからなおさら、誰にも見せなかったものは誰にも見せないであげて欲しかった。
世間から見れば不道徳だからとか、そんなことではない。
恋はどんな状況であっても、その人自身であり、一番大切な弱み。
それは、からだが無くなっても、ずっと遺っているような気がする。

 

それにしても、向田邦子の可愛らしさと健気さ。そして、その想いでも救えなかったせつなさ。

ああ、やっぱり遣る瀬無い。

 

 

 

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45 STONES (斉藤和義)

斉藤和義のアルバム『45STONES』のdisc2が好きで、よく聴いている。

そのうち、弾き語りの10曲は、東日本大震災支援USTREAMチャリティライブ「空には星が綺麗」の音源だそうだ。自分の好きな曲が連なっているし、何より、熱い気持ちが伝わる。

中でも、「ずっと好きだった」のギターの音がいい。音を言葉で表すのは難しいけれど、乾いた孤高な感じがする。だけど艶があって寄り添いたくなるのは、斉藤和義が弾いているからかもしれない。

今まで、ギターを弾くアーティストの曲はいろいろ聴いてきたけれど、斉藤和義に限って、その音にとても興味が湧く。詳しい人に訊ねると、この曲のギターはギブソンJ-45というらしい。

 

今年のライブは、そんな弾き語りツアーだった。

ステージにたった一人、周りに色んなギターを並べ、一つ持ち替えるたび
「これ、いいでしょ?」
と、見せてくれる。ギターの話もいろいろ聞けて愉しかった。

来年の春にも、またライブの予定がある。

何より嬉しいのは、こんな地方の小さな会場に毎年のように来てくれること。

この地を好きなのかそうでないのか分からないようなMCをしながら、飄々とカッコいい。

 

もう何年間も、日々の車の中で聴きながら励まされたり慰められたり。
やっぱりエロい人が好きなんだな、わたしは。

 

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Blue Bayou ( Linda Ronstadt )

先日、初めて入った雑貨屋で、リンダ・ロンシュタットのアルバムが流れていた。

思わず、スタッフさん達の顔を見渡してしまったけれど、みんな若い。BGMアプリなのか誰かの選曲なのかわからないけれど、ちょっと嬉しくなった。

そういう自分も、このアルバムを知ったのは十年ほど前。キッカケは何だったか…きっと人に教えてもらったのだろう。中でも「blue bayou」が気に入って、何度も聴いた。

blue bayouは、青い入江という意味。この曲は、ロイ・オービンソンとジョー・メルスンの共作で、故郷に残してきた恋人を思う歌。一生懸命働いて、いつかブルーバイユーに戻って、恋人や友達と幸せに暮らすんだと力強く唄われる。

 

いつか夢を叶える。

その夢は、歳を重ねるにしたがってだんだん小さなものになる。それは、大きな夢は叶わないと諦めるからじゃなくて、小さな夢でも幸せに感じられるようになるから。

友人も少なくなって、より幸せになる。好きな人達をたいせつに慈しんで、心安らぐ。

日々考えなきゃいけないこと、やっておかなきゃいけないこと、自分を奮い立たせて頑張らなきゃいけないときがある。

それでもいつか、自分のブルーバイユーに戻れることを夢見て、今日も元気を出して働こうと思える曲。

 

まだまだやってないことがある。あなたにも、私にも。

 

 

bluebayou YouTube

 

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