旅は出逢いがあるから愉しいのだと、少しわかってきたこの頃。浜美枝さんのブログに、旅の話が書かれていた。
ある地に建つ趣ある旅館のこと。女将さんとの出会い。浜さんは、きっと何度か其処へ宿泊されたのだろう。
女将さんは、老舗の料理屋の娘さんだったらしい。由緒ある美術館の館長に、この地にぜひ旅館を作って欲しいと頼まれ、一念発起したのだって。
でも、五年前、その女将さんは他界されたそうだ。
彼女のことを、いまは亡き司馬遼太郎さんは「女将は行を耐えるようにその地を守っている」とお書きになっています。きれいに櫛のはいった白髪をひとつにまとめられ、白の半襟は、まぶしいほどの白さでした。
そんな佇まいの方だったのかと、今になって知る。
数十年前、高校の恩師から電話をいただいたことを思い出した。
旅館の息子さんの縁談を頼まれ、一番に貴女の顔が浮かんだと言われた。
貴女なら次の女将になれる。息子さんに一度会ってみないかと。
もちろん、おそれ多くてお断りしたけれど、それもまた思い出。
以前、その旅館でお昼ご飯をいただいたことがある。美味しい料理を堪能しながら、もしここに嫁いでいたらどんな人生だったかしらと想像してみる。浜さんのブログを読んでいたら、また違う気持ちで味わっていたかもしれない。
何処に何度訪れても、その度に別の感慨が生まれる。
今の世の中、気軽に旅に出かけられなくなった。生きているといろんなことがある。仕方ないけれど、また近いうちに旅の空を仰げるようになれると嬉しいね。