家から5分ほど歩いたところに本屋がある。
読みたい本はネットで買わず、其処に注文している。
地方だからなのか、発売日から十日ほど遅れて届く。
あーやっと来た…なんて歩いて受け取りに行く、そのひと時がとても嬉しい。
『夢に迷って、タクシーを呼んだ』は、以前感想を書いた『すべて忘れてしまうから』の完結編。
本屋の奥さんが
「もうこの本自体が芸術品みたいで、ずっと持っておきたくなりますね」
と、楽しそうに手渡してくれた。
生きていると、皆んな、いろんなことがある。
良いこともそうでないこともある。
好きなことも、苦手なことも、違和感を感じることも。
今日はなんか嫌だったな…なんだか辛かったな…なんて日も、それが生きることなんだからと気持ちに蓋をして、取り沙汰しないでやり過ごすことが多い。
燃え殻さんの小さな思い出を読みながら、そんな刹那がよみがえる。
思い出して喜んだり悲しんだりして良いんだよと言ってもらってるような気がする。
そして、彼の「好き」と「苦手」に共感できるものが多い。
長尾謙一郎さんの絵と滝本淳助さんの写真が行間に濃淡を付ける。
あー
人生いろいろあるけど、この本はあったかい。
そう感じてちょっと胸が熱くなる。
本屋の奥さんが言ったように、やっぱりこの本は芸術品なんだと、たいせつに書棚に戻す。