自分では選ばない本がある。
私のそれは、戦闘、災害、病気…などに関する本。
嫌いとか好きよりも、悲しすぎて最後まで読めないことが多い。しかも、考えすぎて当分抜け出せなくなったりする。
『wonder』も、たぶん、そのジャンルだと思っていた。
近所に住む小学生男子と、時々会う。
顔を見ると、学校のことや家のことや最近の出来事などを楽しそうに話してくれる。
先日、突然、この本を鞄から取り出して、学校の図書館で借りて読んだら面白かったからぜひ読んで!と見せてくれた。
表紙と帯と厚みを確かめて、あー私に読めるかしらと不安になった。
「ありがとう、でも、分厚くて読めないかも」
申し訳ないけれど断ってしまうと
「読んでほしいの、お願いだから読んでみて」
と私の手に置いたまま帰ってしまった。
それが、読み始めるとおもしろかった。
顔だけに遺伝性の病気を持っている男の子オーガストの話。
でも、単なるハッピーエンドなストーリーではなく、オーガストのお姉さんや友達の一人称で構成されそれぞれの心の中も書かれている。
良い人だって、優しい人だって、意地悪な人だって、心の中はそれだけじゃない。100%な人間はどこにもいない。
そんな複雑な感情が、それぞれの心の中で前進と後退を繰り返し、揺れながら立ち向かいながら確立されていく。
その度に先生が提示する格言も、また興味深い。
本を貸しくれた男の子も、一つだけ気になる事象を持っている。私はまったく気にならないけれど、当事者の心の中はわからない。
お茶を飲む時間も、暖房をつけるタイミングも、難しい仕事を考える期限も忘れるほど夢中で読んだ。
自分では決して選ばなかったこの本を貸してくれた11歳の彼に感謝したい。
幾つになっても新しい発見があるとおしえてくれて、ありがとう。