『ビューティフルマインド』は、2001年のアメリカ映画。ノーベル経済学賞受賞の実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いた物語。
この映画を観たくなったきっかけは、知り合いの男の子の言葉だった。
彼は近所に住む小学五年生。
明るくて素直でいつも楽しそうに歩いている。
そんな彼と私はよく話をする。
「僕はどうしてかわからないけど、字を覚えられないんだ。算数しかできないの。算数は全部わかるよ。それで高校に行ける?」
彼は時々、本を貸してくれる。
小学生版の伝記を持ってきて
「はい、宿題ね」
と笑う。
宿題を出されて三日後、
「ごめんね、忙しくてまだ途中までしか読めてないの」
と言うと
「忙しいならいいよ。忘れられてたら悲しいけどね」
なんて、戯けて答えてくれる。
字が覚えられないのは、お母さんが言うのに本当らしい。病院で、その病名ももらっている。
じゃあ、なぜ、本が好きなの?
「僕は、本を字で読まないからだよ」
と、ニコニコしている。
この子は、もしかすると天才なんじゃないかしらと思ったりする。
だから、『ビューティフルマインド』を観たくなった。
ただ、この映画は、彼のような天真爛漫な笑顔じゃなく、天才ならではの苦悩が描かれていた。
天才って、たいへんなんだなと感じた。
本読みの宿題を終えて彼に返すと、また新しい宿題の本を貸してくれた。
漢字テストで、いつも3点しか取れないんだよと教えてくれる。
私が笑いながら話を聞いていたら、
「それ以上馬鹿にしないで」
と、にっこり微笑んだ。
才能ある彼は、これからどんな人生を切り拓くのだろう。
ノーベル賞を受賞したりするのかしら。
いろんな苦難はあると思うけど、彼のビューティフルマインドがずっと消えないことを心から願っている。