何年前だったか。
雑誌で初めて見つけた高山なおみさんの料理は、素材の色も味もそのまま生かされていてとても気に入った。
使われている器がまた好みで、著書を探した。
レシピだけでなく、エッセイを織り交ぜた『日々ごはん』には、飾らない日常が綴られている。
『フランス日記』は、その日々ごはんの特別編で、高山さんが初めて訪れたフランスの滞在日記。
フランスの食文化や人々の暮らし一つひとつに驚いたり感心したり疲れたり。
眠ったり食べたり喋ったり歩いたり。
食べるって生きること、生きるって五感を動かすこと。
そんないきいきとした風景や食材の様子を読んでいたら、なんだか自分もフランスを旅しているような感覚になってくる。
私は飛行機が苦手で、もう死ぬまで海外には行かないつもりでいる。
でも、フランスには何か特別な思いがあって、この本を開くたび、今の騒動が終わったらちょっと勇気を出してみようかしらと考えてしまう。
パワーを失いそうな時、本棚から出しては開く一冊。
よし、今日もまたがんばろう。