山田詠美の話をしたら、その人が、内田春菊の『キオミ』をおしえてくれた。
早速、買って読んでみた。
なんだろう。そこに書かれている頃の感覚を覚えているようないないような。
読み終えて、おしえてくれた人とまた話したら、彼はこの本を二十年以上前に読んだらしい。
その時、男性作家が書くセックスとは描写が違うと感じたそうだ。
たしかに、男性作家と女性作家のその描写は違うように思う。
私個人の好みでは、女性作家の書き方の方がしっくりくる。
音楽を作る人が書いたブログに
「いかに品をもって毒を吐けるか」
という話があった。
それにはユーモアが必要で、そして洒落てなければいけないと、ある。
セックス描写も、
「いかに品をもっていやらしく書くか」
のような気がする。
その点では、『キオミ』は私には少しつらい。それがリアルであり、それが人間であり、それが本質であるのはよくわかるけれど。
見えないほどいやらしいものはない。と、私は思っている。
見えないほど相手がよく見える。
音とか、匂いとか、息とか温度、声や感覚。
そんなもので書かれた作品が、案外、品のある猛毒だったりする。