四年ほど前、本屋で読みたい本が探せなくなっていた。
探せないというか、見つけられない。
何かは読みたいのに、どれを見ても買って帰ろうと思えない。
家にも、読んでいない本がいくつかあるので、それを開いてみるのだけど、どうも興味がわかない。
そして三年ほど前、父が施設に入居した後、実家の蔵書を買い取ってもらった近所の小さな本屋さんに、読みたい本がいくつも見つかって嬉しかった。
その時、四冊買って家に戻り、改めて見るとその中に小説が一冊も無い。エッセイや写真集、詩集、料理本…。
そうか、小説が読めなくなってるのかも。
谷川俊太郎さんの『必要な言葉』に
「このごろ、小説の言葉がぼくには不要になりつつある。」
と書かれていたのを思い出す。
「面白いけどいまこういう言葉は必要じゃないと感じてしまう。年取って人生の基本が腑に落ちてくると、細部がどうでもよくなってくるのかもしれない。」
人生の基本が腑に落ちたかどうかはわからないけれど、小説の世界に入り込めないのはちょっと寂しい気もする。
そんなうち、最近また小説が読めるようになってきた。
どういう心境の変化なのかはわからない。
谷川俊太郎さんは、今、どんな本を読んでいらっしゃるのだろう。
ちょっと気になったりしている。