私の暮らす県は、全国でも災害が少ないことで知られている。
2011年の東日本大震災で被災された方も、多く移住して来られた。
降水確率も低く、晴れの日が多い。
だから、大雨警報が出ても、避難勧告が避難指示に変わっても、漠然とした恐怖感だけで、どうすれば良いのかわからなかった。
その夜は、数分おきにスマホの緊急速報が鳴った。娘の住む地域に避難指示が出る。
「被害と言っても浸水だろうから、とりあえず二階で寝るね」
と、LINEがきた。
まったく呑気よねと笑いながら、私もベッドで目を閉じていた。
突然、地響きのような爆音。家にいるもう一人の娘が「何?」と聞く。友人達から次々に「何の音?」とLINE。
結局、50kmも離れた地域の工場で、浸水による化学反応で爆発があったらしい。
遠くの友人、近くの友人、皆で情報を分け合いながら夜が明けた。
家の周りはおかげさまで大きな被害も無く、これで終わったと買い物に出たり、近くの知り合いの安否を確認したり。
でも。終わってはいなかった。
同じ県だけで、死者57人。行方不明者17人。床上浸水5,700棟。
浸水のため二階の押入れで救助を待ち続ける家族。振り返ると息子2人がいなくなっていたお母さん。母親を助けられなかった娘さん…。
人に会って話せば、それだけ被害を知る。
たくさんの人が泣いていても、バラエティー番組の中は笑っていて、SNSで美味しく楽しい話題が流れる。そして同県内のデパートで働く友人が、何も変わらず買い物客がいっぱいだよと教えてくれる。
こんなことを書いている私だって、違和感を感じながら普段と同じ生活をしている。
自県や他県から、公私の物資や救済ボランティアが集まり始めた。
悲しみから抜けられる日が来ることを、ただただ祈ります。