こんな歳になって、ようやく「お金」に向き合い始めた。
母は、十五歳で故郷を離れ、海千山千。沢山の苦労を乗り越えてきた強い人。
その母に私はいつも
「あんたは欲が無い」
と、嘆かれ、叱咤され呆れられ守られてきたのだと思う。
亡くなる数日前、
「これからお父さんをどうしよう」
と溢した私に
「大丈夫。あんたは小さなお金には困らないように出来ているから」
と、笑った。
お金のことを口にするのは、はしたないことだと日本人は考えているらしい。思い当たる。
西原理恵子のこの本は、お金の恐ろしさ、貧乏という環境の辛さから始まる。
世界の至る所で貧困に泣く子供達。
これだけ物に溢れる日本の中に潜む貧しさ。抜け出せない負の連鎖。
でも反面、お金は、自分の大切な人を守り、幸せにして笑顔にしてあげられる良いものでもある。
とも書かれている。
どんな風に使うかは、自分次第。
そのために、お金を稼ぎましょう。
働くことが、生きることなんだよ。
それを忘れないで。
背筋が伸びる。
「ケチというのはお金をケチるんじゃない。気持ちをケチるんだ」
「どうせ使うなら、生きた金を使いなさい」
母の声が聞こえてくる。
そうだね。誰かを幸せにするために、一生懸命仕事をしよう。