not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

あ・うん ( 向田邦子)

読みながら、ドラマの場面が見えてくる。この小説がそのまま脚本になりそうで、キャストを考えて楽しんだりする。
実際、ドラマや映画になったようで、たみに田中裕子は適役だと思った。

自分が読んだ向田邦子の小説のどれにも共通しているのは、"黙す"ということのような気がする。

黙っていることが、本当は一番言いたいこと。
黙している想いが、一番たいせつなもの。


それは何があっても決して口に出さず、誰が気付いていても決して問わない。

そんな想いを抱いて生きるのは苦しいけれど、考えようによっては幸せ。
言ったすべての願いが叶うなら、もう魅力は感じられないだろうから。

「あれ、なんていったかなあ、ほら、将棋の駒、ぐしゃぐしゃに積んどいて、そっと引っぱるやつ」
「一枚、こう引っぱると、ザザザザと崩れるんだなあ」

ザザザザと崩れないように、黙す。

自分の中にあたためて、墓まで持っていく。
もしかすると、それが人生の醍醐味なのかもしれない。

 

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