長い長い雨と曇りの日々を、案外平気で過ごしてきたはずだったけれど、こうやって久しぶりにお日さまを見たら、泣きそうになった。
私くらいの年齢になると、ちょっと鬱々すればお年頃だと揶揄されるから、いつもにこにこと笑顔を見せる。
でも、娘だって鬱々とする日もあるし、ティーンエイジャーも苛々している時がある。
最近読んだ本で、いつまでも余韻が残っているのは『ボクたちはみんな大人になれなかった』という小説。
劇的じゃない人間同士が、ありふれた待ち合わせ場所で誰からも注目されず静かに出会った。すごいブスを覚悟していたので、ふつうのブスだった彼女にボクは少し安堵した。
自分がすみかにしている場所以外に、別の顔をして別の自分を演じられる居場所を持つことが人生には必要なんだということを、ボクは真夜中のゴールデン街で通りすがりの賢人たちから学ばせてもらった。
ボクは眠りそうで眠れないスローモーションのような時間の中で、今日起きたら彼女に電話して、好きだよと言おうと思った。この瞬間の気持ちがずっと続けばいいのに。明日も、明後日も、何年先もずっと。それは夢だよと誰かに言われたとしても。
人は「今より悪くなる事」と同じくらい、「今より良くなる事」に対して恐怖心を抱く生き物なんじゃないかと思う。
笑いながら話しかけてくる人間に善人はいない。
「人生の本当に大切な選択の時、俺たちに自由はないんだよ。ケセラセラよ」
生きていると言葉なんかじゃ救われない事ばかりだ。ただその時に寄り添ってくれる人がひとりいれば、言葉なんておしまいでいい。
「どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだよ」
少し煩雑な文章が、ドキッと心を掴む。
さぁ、今日も笑顔で過ごそう。