not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

女ともだち(早川義夫)

2018年5月10日

「5/20(日)鎌倉歐林洞のライブを最後にしばらく休みます。再び歌い始めて25年ありがとうございました。」

という呟きを置いて、早川義夫さんは本当に姿を見せなくなってしまった。

 

何年前だったか、著書『たましいの場所』のあまりにも真っ直ぐで澄んだ文章に心打たれた。

それから何冊か読み、ご本人のサイトを見つけたり呟きを探したり…。

日々の中で自分の頭の中がグルグルになった時バイブルのように開いてきた。

 

2019年3月29日

「一年前、妻が癌になって初めて、そばにいてやりたいと思いました。しい子は3月28日に亡くなりました。」

という呟き。

そうだったのか…。それからまた姿が見えなくなり、どうしていらっしゃるだろうと気になっていた。

 

2020年9月10日

「しい子との出会いから別れまでを書こうと思った。いろんなことがいっぱい思い出される。うまくまとまらない。けれど、書いている最中だけは元気になれる。書き上げなければ自分が終わらない気がした。」

著書『女ともだち』の刊行を知らされる。

 

本が出たのも嬉しいし、活動をしていらしたことがわかって安心できたけれど、自分はまだ読めないなぁと思った。

泣きたくないし、母や父を見送った時を思い出すのが辛かったから。

それでも少しずつ歩み寄り、心の準備をして、ようやく注文した。

 

男の人は淋しがりで強がりでワガママで弱い。

奥さんがいなくなった後、こんなに悲しくて何もできなくなって悔いたりしている。

母を先に亡くした時の父と同じだ。

 

でも、しい子さんは幸せだったと思う。

好きな人と最期まで一緒にいられたのだもの。

あの病室の写真を見れば、誰にだってわかる。

 

 

 

ご冥福を心からお祈りいたします。

 

 

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美味しいパスタがあると聞いて(あいみょん)

世代が離れているアーティストの音楽は、なかなか聴く機会が無い。

聴こうとしないのか、聴いても響いてこないのか。

 

昨年だったか、あるブログで吉田拓郎のラジオ番組の記事を読んで、早速YouTubeでその番組を聞いてみた。

そこで吉田拓郎が、奥さんの森下愛子さんがあいみょんにハマっている話をしていた。

「あんまり楽しそうに歌い踊っているので、聴いてみると良いんだよ。皆んなも好き嫌いしないで色んな音楽聴かなきゃだめだよ」

 

そんなこともあり、あいみょんを聴いてみると、良いんだよコレが。

どこかで聴いたようなのに新しい。

あの頃のあの気持ちがよみがえる。そして本当はまだ自分の中にそれが残っていることもわかったりする。

やっぱり人間て、同じことを繰り返しているんだな、なんて思う。

曲と歌詞が力強くて、哀しいときは生きるせつなさを、嬉しいときは生きる希望が真っ直ぐ伝わってくる。

 

若いって先があっていいなぁとも思うし、若いって先が見えなくてたいへんだなぁとも思う。

 

これからあいみょんの曲はどんなふうに変化していくのかな。

とても楽しみ。

 

 

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薔薇色の鳥の本(石井ゆかり)

好きな本屋で見つけた古書。

開いたそれぞれのページに、短い文章が書かれてある。

言葉のこと。

感情のこと。

いろいろ。

 

買って帰って、時々、パッと開いて読む。

その時々の自分の気持ちや生活に、すーっと入ってきて、なるほどなぁ…とか、ほぉほぉ…とか、そうかなぁ…とか、一人で相槌を打つ。

 

そんなことをしながら半年ほど経ち、前置きを読んで初めてこれがビブリオマンシー本だと知った。

ビブリオマンシー本とは、パッと開いたページに今の自分とむすびつく言葉を見つける古くからある占い本のこと。

 

占いを、好きな人と嫌いな人がいる。

私は、結構好き。

当たる当たらないより、偶然見えるものがあるから面白い。

大きな問題を抱えている時も、なんだかハッキリわからないけれどモヤモヤが止まらない時も、元気が出なくて困っている時も、自分の嫌なところが余計に嫌になる時も、占いに抜け道や答えが見えることがある。

 

この本には、押し付けない励ましや癒しや気づきが隠れている。

 

いつかまたね、っていうのは

そんなにあやふやなことでもありません。

約束でも拘束でもありませんが、

ウソでもありません。

 

今日もパッと開くと、あの日の光景が思い出されて少しだけ希望を感じた。

 

イラストも、好み。

 

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すべて忘れてしまうから(燃え殻)

『僕たちはみんな大人になれなかった』以来、燃え殻さんの書いた物を、Twitterも含め出来るだけ読んできた。

でも、週刊スパには困った。
最初は本屋で見つけられず、店員さんに尋ねて案内され、あれれーと思った。
これは買って帰ると家族が驚くだろうから、申し訳ないけれど立ち読みする男性達に混じり、小さい女が余計に小さくなって読んだ。

それから後、スパが出る度に本屋を巡る。
袋綴じになっていたり、早々に売り切れていたり、なかなか読めない。
読めないのにまた次週がきて慌てて探し歩く。
もう刊行についていけなくなってしまい、殆ど諦めてしまう。

そんな泣き言をTwitterに独言た日、思いがけず燃え殻さんからプレゼントが届いた。
#031「今夜は、笑い話かエロ話だけにしましょう」のページ画像を送ってくださったのだ。

こんなことってあるだろうか。
優しいとか、良い人とか、そんな単純なことではない。
燃え殻さんは今やベストセラー作家でもあるのに、見知らぬフォロワーに自分の作品をいとも簡単に読ませてくれる。
『すべて忘れてしまうから』の中にいるままの人だなぁって、ありがたかったし、あたたかかった。

隠れたロッカーの中で
「ここではないどこかに連れてってください」
と、八百万の神に真剣に念じたり

クリスマスイブにリンリンハウスで
「はい、似てます」
と、返事をしたり

いろいろなときの燃え殻さんが、今も変わらず文章を書いてTwitterで呟く。

いつか本になることを期待して待っていた。
だから、発売日にすぐ本屋に行ったら地方だからまだ置いてなかった。
Amazonは売り切れのタイミングだった。
やっぱり私はいつも出遅れる。
あちらこちら探して手元に届いたときは嬉しかった。

長く生きていると思い出なんて何でもよくなる。
だって、すべて忘れてしまうから。
忘れても変わらないものを抱いている人。
其処が好きなんだね、きっと。

 

 

 

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かもめ食堂

右脚の筋肉を痛めて、歩くこともままならなくなった。

家事も出来ず、仕事も休んで、自分のベッドの上で足の置き所を探して悪戦苦闘する。

痛みが続くと気持ちも塞いでくる。

 

ふと思い立って、『かもめ食堂』の文庫本を開いた。

読了後は『かもめ食堂』の映画を観る。

何度読んでも、何度観ても、好きな作品は気持ちがほぐれる。

そして、読むたび、観るたびに新しい発見がある。

 

この作品のテーマは「おにぎり」だな…

なんて思う。

かもめ食堂の看板メニューは、鮭と梅とおかかのおにぎり。

フィンランドの人にはあまり知られてないので、最初は誰も注文しない。黒い紙が貼ってある変な食べ物と思われたりする。

日本人でも、おにぎりは好きだけど知らない人が握ったものは食べられない、と言う人も多い。

 

三人の女性達は、日本でそれぞれの心にぽっかり空いた穴を抱えてフィンランドへ来ている。

北欧の大自然とゆったりした暮らしに吸い寄せられるように、気がついたらその地に立っていた。

でも、実際にフィンランドに滞在していると、現地の人達だってのんびり暮らしてるわけじゃないことが分かる。

誰だって悲しかったり苦しかったり痛かったりするのだ。泣きたかったり、我慢していたりするのだ。

 

おにぎりは、握る人の思いが美味しい。

相手のひと時の幸せを願う気持ちが、美味しい。

食べる人がそれを感じられた時、おにぎりは国境を越えて人と人を結ぶ。

 

かもめ食堂は、優しいけど強い。

痛さも辛さも誰に言ってもわからないし、わかってあげられない。慰めは大切だけど、やっぱり自分で立ち向かうしかないんだと、そっと教えてくれる。

 

 

エンディングの「クレイジーラブ」が、また良いのよね。

 

 

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(追記: 脚は十日ほどで回復しました。)

 

 

 

 

ビューティフルマインド

『ビューティフルマインド』は、2001年のアメリカ映画。ノーベル経済学賞受賞の実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いた物語。

 

この映画を観たくなったきっかけは、知り合いの男の子の言葉だった。

彼は近所に住む小学五年生。

明るくて素直でいつも楽しそうに歩いている。

そんな彼と私はよく話をする。

「僕はどうしてかわからないけど、字を覚えられないんだ。算数しかできないの。算数は全部わかるよ。それで高校に行ける?」

 

彼は時々、本を貸してくれる。

小学生版の伝記を持ってきて

「はい、宿題ね」

と笑う。

宿題を出されて三日後、

「ごめんね、忙しくてまだ途中までしか読めてないの」

と言うと

「忙しいならいいよ。忘れられてたら悲しいけどね」

なんて、戯けて答えてくれる。

 

字が覚えられないのは、お母さんが言うのに本当らしい。病院で、その病名ももらっている。

じゃあ、なぜ、本が好きなの?

「僕は、本を字で読まないからだよ」

と、ニコニコしている。

 

この子は、もしかすると天才なんじゃないかしらと思ったりする。

だから、『ビューティフルマインド』を観たくなった。

 

ただ、この映画は、彼のような天真爛漫な笑顔じゃなく、天才ならではの苦悩が描かれていた。

天才って、たいへんなんだなと感じた。

 

本読みの宿題を終えて彼に返すと、また新しい宿題の本を貸してくれた。

漢字テストで、いつも3点しか取れないんだよと教えてくれる。

私が笑いながら話を聞いていたら、

「それ以上馬鹿にしないで」

と、にっこり微笑んだ。

 

才能ある彼は、これからどんな人生を切り拓くのだろう。

ノーベル賞を受賞したりするのかしら。

いろんな苦難はあると思うけど、彼のビューティフルマインドがずっと消えないことを心から願っている。

 

 

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サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin' ~皆さん、ありがとうございます!!~」

デビュー42周年。

桑田さんの顔を見て、あー年取ったなぁと思った。

それは他のメンバーも。

そして、もちろん自分自身も。

 

そんな40年も前には、サザンは私の住む地方の町にもライブに来ていた。

それを観に行った帰りに、駅の売店で楽しそうにお土産を選ぶ桑田さんと原坊に会ったこともある。

 

YouTubeで昔の動画を観ていたら、桑田さんがくわえ煙草でドラムを叩いていたり、逆らうような口調でインタビューに答えていたりする。

 

そんな彼らも時を経て、病気を経験したり克服したり、休業したり再始動したり。

夫々が、それぞれに乗り越えたものがあって今の顔があるんだなぁと…今回の無観客配信LIVEを観ながら感じた。

その間に、自分もようやく自分の時間を持てるようになり、遠い会場のLIVEにも足を運ぶ。

今はもう、LIVEだけが嬉しいのではなくて、共にここまで来たねという泣けるような心持ちになってしまう。

 

この度のLIVEは、桑田さんのファンサービスだけでなく、LIVEに関わるすべての人達の生活応援のためでもあると聞いた。

スタッフさん達は、LIVEやるぞという報せを受けて飛び上がるほど嬉しかったそうだ。

 

デビューして何度めの夏が来ただろう

いろいろと皆さまのおかげです

世の中は予期しないことがあるけど

これからもがんばってまいりましょう

あなたに守られながら私はここにおります

笑顔を見せてください

また会う日まで待ってます

人生は世の中を憂うことより

素晴らしい明日の日を夢みることさ

愛する人よ…

 

どこまで元気でいられるかな。

がんばろうね。

サザンも私も。

 

 

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