not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

日本の小さな本屋さん (和氣正幸)

前回の記事に書いた"読みたい本が見つかる小さな本屋さん"が、大きな本屋に並べられた『日本の小さな本屋さん』の中に掲載されていた。

 

和氣正幸さんというライターが、小さな本屋の魅力を伝える「BOOKSHOP LOVER」という活動の一つとして発行した本。

全国津々浦々にある、特別な唯一無二の小さな本屋さんが23店、紹介されている。

頁をパラパラとめくって、自分の好きなお店を見つけて、思わずニンマリとする。

 

それに、本屋にあるのは本だけではない。

店主が本を通して来てくれる人に伝えたいもので溢れている。

それは音楽かもしれないし、空間そのものかもしれない。

漂う匂いもそうだろう。それらすべてが合わさって、その本屋を構成している。

 

店主さんの人柄も大きな要素だし、伝えたいものを押し付けないで漂わせるのも魅力の一つ。

有名ではないけれど、意外に皆んな知っている。

中に入るのは最初に勇気がいるけれど、二度目からはワクワク感がある。

 

あなたの町にもきっとあるんじゃないかな。

ちょっと勇気を出して、ドアを開けてみてほしい。

 

 

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必要な言葉 ( 谷川俊太郎 )

四年ほど前、本屋で読みたい本が探せなくなっていた。

探せないというか、見つけられない。

何かは読みたいのに、どれを見ても買って帰ろうと思えない。

家にも、読んでいない本がいくつかあるので、それを開いてみるのだけど、どうも興味がわかない。

 

そして三年ほど前、父が施設に入居した後、実家の蔵書を買い取ってもらった近所の小さな本屋さんに、読みたい本がいくつも見つかって嬉しかった。

 

その時、四冊買って家に戻り、改めて見るとその中に小説が一冊も無い。エッセイや写真集、詩集、料理本…。

そうか、小説が読めなくなってるのかも。

 

谷川俊太郎さんの『必要な言葉』に

「このごろ、小説の言葉がぼくには不要になりつつある。」

と書かれていたのを思い出す。

「面白いけどいまこういう言葉は必要じゃないと感じてしまう。年取って人生の基本が腑に落ちてくると、細部がどうでもよくなってくるのかもしれない。」

 

人生の基本が腑に落ちたかどうかはわからないけれど、小説の世界に入り込めないのはちょっと寂しい気もする。

 

そんなうち、最近また小説が読めるようになってきた。

どういう心境の変化なのかはわからない。

谷川俊太郎さんは、今、どんな本を読んでいらっしゃるのだろう。

ちょっと気になったりしている。

 

 

 

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パンプルムース!( 江國香織 文 いわさきちひろ 絵)

好きな本屋さんで、『パンプルムース!』という素敵な本を見つけた。

いわさきちひろの絵と、江國香織の文。

 

すみれ

 

あなたにもおばあちゃんがいる?

よのなかには たくさんおばあちゃんがいるものね

 

私には、四人のおばあちゃんがいた。

父の実母と養母、母の実母と、実母が亡くなった後に嫁いできた継母。

 

わたしにもおばあちゃんがいて

かのじょはすみれのはなににていたわ

 

四人の中で一番好きなおばあちゃんは、母の継母だった人。

子供の頃、夏休みと冬休みにはずっと、そのおばあちゃんと過ごした。

 

よのなかのおばあちゃんは みんなすみれのはなににているのかしら

あなたのおばあちゃんはどう?

 

確かに、彼女はすみれの花に似ていた。

笑顔がとても優しくて、綺麗で、いつも抱きしめてくれた。

 

そんな私も、もうおばあちゃんになってしまった。

なってしまって初めて、"おばあちゃん"も一人の女性なのだとわかった。

人生を笑ったり泣いたり誰かを愛したりしてきたのだとわかったら、もしかすると、それがすみれの花に似ている所以なのかしらと思った。

 

私もいつか、すみれの花に似ていると言ってもらえたら、嬉しいな。

 

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マディソン郡の橋 (ロバート・ジェームズ・ウォラー)

何年も前にこの映画を観て、その後、原作を読んだ。

原作は映画より静かで強烈だった。

ふたりのことは事実だから、取材すればもっと色んなことが明らかになるだろう。

でも、どんなに詳細が分かってもお互いの心の中は計り知れない。

 

ただ、ちょっと感じたのは、自分の中にもフランチェスカが居るってこと。

年齢も環境もよく似ている。

 

人は毎日の営みの中で「今の生活は本当に自分が望んでいたことなのだろうか」と考えていては生きていけない。

もしあの時こうだったら…と、考えないわけではないけれど、そんなことで立ち止まらず、今置かれている立場や責任を自分の使命として、周りの人達の笑顔や思い遣りを支えとして生きている。

この二人だって、きっと出会うまではそうやって暮らしてきたのだろう。

 

「もしもロバート・キンケイドに出会わなかったら、わたしはその後ずっとこの農場にとどまれたかどうかわからない」というフランチェスカの言葉が重い。

彼女は、亡くなるまで貸金庫にキンケイドの遺品を預けていた。そして思い出は心の中に仕舞っていたのだろう。

人は皆、大切な思い出を自分の中に持っている。だから、日々の暮らしを続けられるのかもしれない。

だから、逝けるのかもしれない。

 

 

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西日本豪雨

私の暮らす県は、全国でも災害が少ないことで知られている。

2011年の東日本大震災で被災された方も、多く移住して来られた。

降水確率も低く、晴れの日が多い。

だから、大雨警報が出ても、避難勧告が避難指示に変わっても、漠然とした恐怖感だけで、どうすれば良いのかわからなかった。

 

その夜は、数分おきにスマホの緊急速報が鳴った。娘の住む地域に避難指示が出る。

「被害と言っても浸水だろうから、とりあえず二階で寝るね」

と、LINEがきた。

まったく呑気よねと笑いながら、私もベッドで目を閉じていた。

突然、地響きのような爆音。家にいるもう一人の娘が「何?」と聞く。友人達から次々に「何の音?」とLINE。

結局、50kmも離れた地域の工場で、浸水による化学反応で爆発があったらしい。

 

遠くの友人、近くの友人、皆で情報を分け合いながら夜が明けた。

家の周りはおかげさまで大きな被害も無く、これで終わったと買い物に出たり、近くの知り合いの安否を確認したり。

でも。終わってはいなかった。

 

同じ県だけで、死者57人。行方不明者17人。床上浸水5,700棟。

浸水のため二階の押入れで救助を待ち続ける家族。振り返ると息子2人がいなくなっていたお母さん。母親を助けられなかった娘さん…。

人に会って話せば、それだけ被害を知る。

たくさんの人が泣いていても、バラエティー番組の中は笑っていて、SNSで美味しく楽しい話題が流れる。そして同県内のデパートで働く友人が、何も変わらず買い物客がいっぱいだよと教えてくれる。

 

こんなことを書いている私だって、違和感を感じながら普段と同じ生活をしている。

自県や他県から、公私の物資や救済ボランティアが集まり始めた。

悲しみから抜けられる日が来ることを、ただただ祈ります。

 

 

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アイネクライネナハトムジーク( 伊坂幸太郎 )

本屋の平置きで目にしたタイトル。アイネクライネナハトムジークって、曲名だよねぇ…モーツァルトだったか。でも、斉藤和義にもアイネクライネという曲がある。

そしてあとがきを読んで、この小説は、伊坂幸太郎斉藤和義のファンであることが執筆のきっかけと書かれている。

それを知った本人から、「出会いにあたる曲の歌詞を書いてくれないか」とオファーがあったそうだ。

伊坂幸太郎は、歌詞は書けないけれど小説ならと受けて、いわゆる"恋愛もの"にあまり興味が無かったので必死に考えたとか。

 

そんなエピソードもまた「出会い」だなと、読みながら感じた。

 

この本には短編が6つある。それぞれの主人公が、他の物語にも登場する。

あ、あの人ここに出てる。

そうか、ここで繋がっていたんだ。

あーこの人、あの時の。

それらはすべて、「出会い」であり「きっかけ」になる。

 

私達も、意外にたくさんの人達と関わっている。

その出会いをどれくらい重要視するかはそれぞれだけど、その人がまた誰かと繋がり、誰かがまた別の人と繋がる。

ちょっとした関わりで、生きる勇気をもらったり、小さな安らぎを感じたり。

嫌な気持ちにさせられたり、傷ついたり、奮い立たせられたり。

人と人との関わりは、おもしろい。

 

この小説を読んだ後、友人達や仕事の相手にも、なんとなく由縁を見つけたくなる。

伊坂幸太郎を読んだのは初めて。恋愛ものも、たまには書いてください。

 

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おしゃれな女( Sight of my court) (原由子)

原由子のオリジナルアルバムは6枚。だと思う。

その中で、一番好きな曲を敢えて挙げるなら『おしゃれな女』かなと…。

『しっかり John-G』も、『花咲く旅路』も、『ヨコハマ・モガ』も『My Baby Shine on Me』も大好きなんだけど、やっぱり『おしゃれな女』がいい。

 

女ごころを見事に表している詞を、ジャズのメロディーに乗せて、せつなく歌う。

なのにちっともいやらしくならないのは、原由子の声だからだろう。

そして、この曲の作詞作曲は斉藤誠。ライブでは桑田さんに"チェリーボーイ"と揶揄われているけど、こんな詞が書けるチェリーボーイがいるはずない。笑

 

  甘い言葉一つかけてくれないのね…

 

先日読んだブログに

「1+1は2」そんなわかりきったことを男は口に出して説明しないけど、口に出して「1+1は2」と説明してほしいのが女。
だから男は「そんなわかりきったこと」を、女性にきちんと口に出して伝えなければいけない。

と、書かれていた。

私の勘違いでなければ、「わかりきったこと」が「甘い言葉」なのかな。

 

「四六時中も好きと言って」は、桑田さんが男目線で書いたのか女目線なのか。

四六時中じゃウソに聞こえるけど、男だって女だって、好きな人からたまに聞きたいよね。

そんな希少な甘い言葉を、女はたいせつにたいせつに重ねて仕舞っている。

そして、生涯の終わりにそれらを取り出し一つひとつ眺めて、ありがとうと言えるのは幸せ。

 

 

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