not too late

音楽と本と映画と日々⑅︎◡̈︎*

残花亭日暦 (田辺聖子)

少し遠出のドライブを楽しみにしていたら、当日は朝から大雨。

それでも、たまのお休みなのにと目的地を変えて出かけた。

 

その図書館は、山の中の小さな駅に連結している。

TSUTAYAとスタバも入っていて、椅子もテーブルもたくさんある。

好きな本を、好きな椅子で、時間を忘れて楽しんだ。

 

田辺聖子さんの著書は、小説も好きだけどエッセイもおもしろい。

笑いあり、涙あり。しみじみしたり、なるほどと共感したり。

『残花亭日暦』は日記形式で、中に、ご主人の看取りのことも書かれている。

人生の途中で出逢った最愛の人が病気になり、命絶えるまでを見守る。

壮絶なのだけど、あたたかい。愛が大っきい。

 

そしてふと思った。〈かわいそう〉と思ってくれる人間を持ってるのが、人間の幸福だって。〈愛してる〉より、〈かわいそう〉のほうが、人間の感情の中で、いちばん巨きく、重く、貴重だ。

 

「かわいそに。ワシはあんたの味方やで」

逝く方も、見送る方も、お互いを〈かわいそう〉と愛おしむ。

 

読みながら泣きそうになって、あわてて前を向いた。

図書館の大きな窓から、雨に煙る山々が見える。

 

田辺聖子さんは、冷静でありアッサリしているようで、やっぱり最期まで女だったような気がする。

天国でおっちゃんに会えたかしら。

心からご冥福をお祈りします。

 

 

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夢で逢ってるから (DREAMS COME TRUE)

先日、娘と二人で鎌倉へ遊びに出かけた。

鎌倉へは、まだ三度目の初心者旅。

駅を出て大勢の観光客から離れ、以前おしえてもらった"sahan"というカフェに歩く。

外の雑踏とは別世界のゆったりとした店内で、やさしいランチをいただく。

 

それから江ノ電に乗り、由比ヶ浜で散歩。

一人のときは気のままに歩くけれど、娘がいると彼女がナビになる。

お店を見たり、コーヒーを飲んだり、お土産を買いながら鎌倉へ戻った。

 

前々回は、友人と明月院を訪れた。

六月の満開の紫陽花を堪能。もう暑くて、汗を拭きながら階段を上った。

今回は五月初旬だったので、紫陽花には早くて半袖もまだまだ寒かった。

 

そう。鎌倉へ行くたび、ドリカムの『夢で逢ってるから』を思い出す。

とても好きな曲。

 

忘れたいことを忘れようとしているうちは忘れられない。

"私は大丈夫"と笑うのは可愛げがないと言う人もいるけど、それが一番かわいいような気がする。

夢で逢っているうちはまだ大丈夫じゃない。

それを胸に仕舞えたら、少しずつ新しい自分になっていく。

憂いを抱いた笑顔が、いつか晴々と空を向けますよう。

 

私は大丈夫、夢で逢ってるから。

 

 

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斉藤和義 弾き語りツアー 2019

斉藤和義はなぜカッコいいんだろう、と改めて思う。

色んな"カッコいい"があるんだけど、この人の不思議。

 

一昨年のライブは弾き語り。昨年はバンド。そして今年は弾き語り。

その間に、中村達也とのユニットMANNISH BOYS の活動。

ドラマの主題歌、映画の主題歌、東京スカパラとライブ…

 

なのに、地方の小さな会場を忘れない。

そして、「なんか毎年来てるよねぇ…好きなんだよね…ここ」とポソリと言う。

 

ヘアスタイルもいい。

娘に言わせると、あの髪はNGらしい。世代の違いなのか、好みの違いなのか。

 

何よりギターが良い。専門的なことはわからないけど、聴き惚れる。

弾き語りのライブはステージにひとり。たくさんのギターを並べている。

それら一つひとつの名前を知りたいな。

名前というのか銘柄というのか分からないけれど、確かに、それぞれのギターは、音の湿度や温度、繊細さや太さ、響き方も異なっていて興味深い。

 

そして声が良い。甘いのに力強く、せつないのに冷たい。

私的には、静かに聴ける弾き語りライブが好きなので今年は嬉しかった。

堪能した。

 

この町の会場はかなり古く、数年先には移転して新しくなる。

どんどんメジャーになって忙しくなって、小さな会場に来なくなったアーティストも多い。

出来るなら、これからも彼のギターと声を近くで聴けますように。

 

 

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サザンオールスターズLIVE TOUR 2019

8会場にエントリーしたら、1会場に当選した。

娘と同行二人片道5時間、電車に揺られ人に押され行列に並び取るもの手につかず。

漸く会場に入れたら、女子お手洗いの長い長い列。

あーもうライブはこれを最後にしようかしら…なんて弱気になる。

済ませて手を洗い終わる時にオープニング。蜘蛛の子を散らすように皆んな席へ走る。

そして始まったサザンオールスターズLIVE TOUR 2019。

 

じっくり聴いて、一緒に歌って、皆で踊って。

あの曲も、あの曲も、あの曲も嬉しかった。

 

サザン40周年。デビュー曲からぶっ飛ばして、走って走ってちょっと休憩。

そして再開。今も尚、ゆっくりじっくり上り続けている。

長い道のりには、きっといろんなことがあっただろうし、ファンにも勿論いろんなことがあった。

ライブで一つひとつの曲に、サザンと自分と、共に聴いた人達や情景を思い出す。

口に出さない想いが、ステージと客席に溢れていたんじゃないかな。

 

演出も素晴らしく、親しみは変わらず、懐かしさもこれからの人生も愛しめる良い時間だった。

 

もうライブはいいや。と思ったはずなのに、また次を待つことにする。

いつまで行けるかわからないものね。

楽しみにがんばろう。

 

 

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愛がなんだ (角田光代)

読みながら家事をしながら、読みながらごはんを食べながら、また次を読みたくなる。

文章もすらすらと読みやすく、合間合間の情景描写や食べ物描写が、たまの息苦しさを緩和してくれる。

 

人を好きになるってこういうことじゃないかな。と、思う。

この主人公はちょっと行き過ぎかもしれないけど、どこで止まるかは性格にも拠るし、環境にも経験にも拠る。

相手を傷つけるわけじゃなく、相手の平穏を願い、自分が傷つくことも外れることも厭わない。

 

片想いでも、恋人同士でも、二人が同じだけ"好き"というのは難しい。

どれだけ連絡して、どれだけ逢って、どれだけ抱き合って、どれだけ見つめ合っても、二人が同じように満足していられるわけじゃない。

その割合を認めながら、バランスを保っていく。

 

私も二十代は、我を忘れる恋をした。

でも、後悔はまったく無い。

痛かったり嬉しかったり、せつなかったり悔しかったり、自分で自分を慰めたり納得させたり。

それが人を好きになるってことなんだと、大人になって分かる。

分かったからって、何歳になっても恋はせつない。

 

この先、テルちゃんはどうなっていくんだろう。

十年後、二十年後。

少し楽しみ。

 

 

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人にやさしく (THE BLUE HEARTS)

友達4人で食事をしていたら、一人が最近またブルーハーツを聴いてると言う。

朝の出勤時の車の中は大音量よ、と笑う。

えー。彼女がブルーハーツを聴くとは知らなかった。嬉しい。

他の二人は、キョトンとしている。ブルーハーツを知らないのだって。これもまた、えー。となる。

 

よく聴いていたのは子育てをしていた頃。

親の病気も重なり、日々に追われ、時間を追いかけ、人の言葉にぐるぐると回って。

帰り道はいつも、甲本ヒロトの歌声を聴きながら運転していた。

 

    気が狂いそう やさしい歌が好きで…

    情熱の真っ赤な薔薇を胸に咲かせよう…

    本当ならば今ごろボクのベッドにはあなたがあなたがあなたが居てほしい…

 

帰り道に橋を渡るとき、空に大きな鳥が悠々と飛ぶ。

その鳥たちが、セカセカと暮らす自分を嗤っているように感じた。

わたしもいつかあんな風に自由に飛べるかしらなんて見上げていたけど、今になって分かるのは、何を突破するのも、何を粉砕するのも乗り越えるのも、自分の気持ち次第だったんだね。

 

友人と一頻りお喋りをして家に戻り、久しぶりにアルバムを出した。

今だって、聴けば寄り添ってくれる。

ガンバレって言ってくれる。

やさしくされて、わたしも少し、やさしくなれたら良いのだけれど。

 

 

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デ・ジャ・ヴー (南佳孝)

今年の春は、なかなか暖かくならない。

家の中では、いつまでもウールのセーターを手放せない。

桜は満開を終えてハラハラと散り始めた。家の庭も車も淡いピンク色に埋まる。

つい先日まで、なんとなく気持ちが上がらなかった。

この季節は"木の芽立ち"とか"芽吹き病"とか言われて、芽を出す生命力が人のエネルギーを取っちゃうのだそうだ。

 

海のそばを運転していたら、南佳孝の「デ・ジャ・ヴー」を口ずさんでいた。

1981年にリリースされたオリジナルアルバム『SILK SCREEN』に収録されている。

 

当時、片岡義男の『スローなブギにしてくれ』がきっかけで知り合った人から、同タイトルの映画に誘われた。その映画の主題歌がこのアルバムに入っていて、二人で何度も聴いてライブにも出かけた。

 

もう、せつなさは残っていないけれど、このアルバムはずっと好きで聴き続けている。

「デ・ジャ・ヴー」は、中でも一番好きな曲。松本隆の詞が情景を思い浮かばせる。

私はその情景の夢を何度か見ている。誰かと波止場を歩き、海辺の店でテーブル越しに食事をしてお喋りを楽しむ。

ただ、いつもその相手の顔が見えないまま眼が覚める。

その人は誰なのか、今だわからない。

もしかするとこの先に出逢うのかもしれないし、もう出会っているのかもしれない…

そんなロマンティックなことを考えながら空を見上げて、今日も暮らしに戻る。

 

 

 

 

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